紙背文書として残された書状・仮名消息についての検討をすすめた。具体的には以下のような問題を中心として追究をおこなった。 ①宮内庁書陵部所蔵三条西本『除目部類』の紙背文書に残る、三条西実隆宛ての後土御門天皇女房奉書について検討し、准勅撰の連歌集『新撰菟玖波集』の選進に同天皇がいかなる意識を持って関与したのかについて検討を行った。すなわち、「准勅撰」を承認することは天皇自身に相応の負担を強いるものであったことを明らかにし、これを論文として公表した。 ②宮内庁書陵部所蔵山科本『言国卿記』および『山科家礼記』の紙背文書について判読および検討をすすめた。特に15世紀末期における地下楽人豊原氏の所領をめぐる動向を知るための素材として活用することで、地下楽人の家の減少という問題について検討を行った。 ③市場に出た三条西実隆宛ての六大院長慶なる伊勢の真言僧の書状を購入し、原本を精査することで、これが金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵『松雲公採集遺編類纂』所収「三条西家文書」として写が残されている紙背文書群のうちの一通として残されたものであることを明らかにした。
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