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2019 年度 実施状況報告書

漢籍書き入れの日本中世史史料としての活用をめぐる研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K03060
研究機関東京大学

研究代表者

川本 慎自  東京大学, 史料編纂所, 准教授 (30323661)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード日本中世史 / 禅宗史 / 学問史
研究実績の概要

本研究は、日本国内に現存する漢籍に記された書き入れについて、とくに中世の漢籍講義や注釈活動に遡るものに着目し、そこに含まれる広範な知識の内容を検討するとともに、そのあり方を史料学的に位置づけることによって、中国文学や日本文学の分野にとどまらず、日本中世史研究の史料として活用する方法を確立しようとするものである。
本年度の研究においては、前年度に引き続き基礎的作業として蔵書目録等によって書き入れ等を有する漢籍の所在状況を把握することに努める一方で、関東近県および京都府の寺院や史料所蔵機関において漢籍等を含む広範な史料の調査を行い、中世に遡り得る漢籍書き入れの有無を確認した。とくに今年度に特筆すべき調査として、埼玉県の禅宗寺院における史料の所在状況についての予備調査に参加し、中世末から近世にかけての様々な禅籍・漢籍が架蔵されていることを確認した。この寺院については、次年度以降に本格的な悉皆調査を行う予定である。
なお、昨年度までの調査も含め、これらの調査で撮影した史料のうち所蔵者の承諾が得られたものについては、史料編纂所図書室において写真帳もしくはボーンデジタルの形で閲覧公開に供する予定である。
また、これらの調査を踏まえて、漢籍から得られる知識についての研究を行った。本年度は、中世禅僧の数学認識について、『周易』などの漢籍と臨川寺文書や賀茂別雷神社文書における算用状との関係を考察した論文が刊行されたほか、禅僧の科学知識についての学会報告、南禅寺慈聖院の旧蔵文書についての史料紹介などを行った。また、社会貢献活動として、『史料編纂所カレンダー2020』に本科研で得られた知見の一部を反映させた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、中世に遡り得る漢籍を調査し、その書き入れを検討することによって中世における知識のあり方や漢籍書き入れの史料学的位置付けを研究することにある。本年度は、目録類によって漢籍の所在状況を把握することを継続し、寺院所蔵史料の悉皆調査に向けて所蔵状況の予備調査を行ったほか、論文による研究成果の発表も進みつつあり、研究は一定の進展を得ているものと考えられる。

今後の研究の推進方策

前年度・本年度の基礎的作業を踏まえて、次年度以降、現地における史料調査を行うほか、史料調査で得られた知見により、漢籍に含まれる知識についての研究を進める予定である。なお、2020年度は、新型コロナウィルス感染症対策にともなう移動制限や大学の閉鎖などの影響により、史料調査・研究ともに遂行が困難な状況となることが予測されるため、日程の変更などの対策を講じたい。

次年度使用額が生じた理由

本年度の史料調査は、計画段階では関西方面の寺院・機関で行うことを想定していたが、実際には関東近県における調査が大半となった。このため、旅費使用において若干の残額が生じたものである。次年度以降は、関西方面においても多くの史料調査を行う予定であり、残額はここに充当する計画であるが、2020年度は新型コロナウィルス感染症に伴う史料所蔵機関の閲覧制限や各種交通機関による移動制限などの影響で旅費使用の困難も予想されるため、状況に応じて物件費への振替なども検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 中世禅僧の数学認識2019

    • 著者名/発表者名
      川本 慎自
    • 雑誌名

      仏教史学研究

      巻: 61-1 ページ: 1-20

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 新収史料 三会院主大義周敦等連署申状(慈聖院旧蔵)2019

    • 著者名/発表者名
      川本 慎自
    • 雑誌名

      東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信

      巻: 86 ページ: 2-3

  • [学会発表] 禅宗と戦国時代の科学知識2019

    • 著者名/発表者名
      川本 慎自
    • 学会等名
      鎌倉禅研究会
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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