第1に、本研究成果のまとめとして、黒田智・吉岡由哲編『草の根歴史学の未来をどう作るか』(文学通信、2020年1月)を刊行した。現役の小・中・高校教員による中近世加越能地域史に関する20本の論考を収録したものである。絵画や彫刻、奇談や縁起、そのほか多様な史料をあつかった新しい歴史学の史料論を展開し、あわせて地域史研究および地域学習教材の実践例を紹介したものである。さらに、コラムや参考文献等を付して、学校教育や教員養成のあり方についても提言をしている。第2に、論文「人ならざるものとの交感」を島尾新・宇野瑞木・亀田和子編『和漢のコードと自然表象』(勉誠出版、2020年3月)に掲載した。近世金沢の奇談集『三州奇談』を素材に、16・17世紀に転回する自然表象の歴史的変容について論じている。第3に、前年にひきつづき明和6年(1769)の小松勝光寺周好による日記『烏兎記』の輪読を定期的に実施し、『金沢大学大学院人間社会環境研究』38・39号に一部を翻刻紹介した。第4に、第24回情報知識学会フォーラム(2019年11月)において黒田智・吉岡由哲「地域史研究と歴史教育」を口頭報告し、『情報知識学会誌』29巻4号に掲載した。第5に、となみ散居村学習講座(2019年6月、富山県砺波市)において「だれが徳大寺実通を殺害したのか」を講演した。そのほか第6に、吉岡由哲「古写真の研究資源化」(『岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センター紀要』39号 2020年)を公刊した。 また、本年度の調査成果として、(1)加賀得橋郷牛島地区のデータベース作成、(2)福井県あわら市松龍寺千体仏、熊坂地区熊坂大仏の調査、(3)金沢市西養寺所蔵絵馬類の調査を実施した。
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