研究課題/領域番号 |
17K03068
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大日方 克己 島根大学, 法文学部, 教授 (80221860)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 出雲風土記抄 / 小篠敏 / 本居宣長 / 内山真龍 / 高林方朗 / 出雲風土記解 |
研究実績の概要 |
『出雲風土記抄』の写本について、本居宣長記念館所蔵本、浜松市立中央図書館所蔵本、群馬大学図書館所蔵本、岡山大学附属図書館所蔵本、多和文庫所蔵本などの調査を行った。神宮文庫所蔵『出雲国風土記』諸本調査も行い、それらを比較分析した。結果として、浜田藩小篠敏が安芸国清神社神主波多野為興由来の『出雲風土記抄』を本居宣長のもとに持ち込み、そこから宣長および伊勢神宮関係者のネットワークを通じて流布、受容され、一方で小篠敏と岡山藩学者の関係を通じても広まっていったこと、それを通じて出雲国風土記研究が大きく進展し、古代出雲像形成にも大きく影響したことを明らかにし、論文「本居宣長・小笹敏ネットワークのなかの『出雲風土記抄』」として発表した。 『出雲風土記解』についても諸本調査を進めるとともに、本居宣長から内山真龍・高林方朗に伝えられた『出雲風土記抄』が契機となって、出雲調査旅行を敢行し、『出雲風土記解』の成立につながったことも明らかにし、上記の論文の一部として発表した。あわせて、浜松市立中央図書館において高林方朗の出雲調査旅日記『弥久毛之道草』の原本調査を行い、内山真龍の『出雲日記』とあわせて、その分析を進め、『出雲風土記解』との関係や古代出雲像の一端も明らかにできた。 各所に所蔵されている『訂正出雲風土記』の実見調査も進め、版元・書肆からいくつかの種類に分類でき、それを通じて流布の地域や時期的な段階を分析できそうな見通しを得つつある。 以上、『出雲風土記抄』『出雲風土記解』を中心に、18世紀後半を中心とした出雲以外の地域における風土記研究と古代出雲への関心の高まりの一端を明らかにすることができた。古代出雲像、歴史意識の形成のなかで重要な位置づけになるはずである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画のうち、『出雲風土記抄』『出雲風土記解』については、調査と分析が順調に進展している。それと関連して、内山真龍の出雲調査旅行の各種旅日記の調査も進めることができた。それらに集中したこともあって、それ以外の風土記注釈・研究書、風土記を引用した地誌類については、新たな調査がほとんど進めることができなかった。ただ、上述のように、出雲国風土記と関係する出雲への調査や旅行の旅日記類を新たに見出し、調査、撮影、分析等を開始した。この点は予定外ではあったが、研究全体にとって重要なプラス面であり、当初予定にあってあまり進捗しなかった部分を補って余りあるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き『出雲風土記抄』『出雲風土記解』『訂正出雲風土記』の未調査分、未分析分の調査、分析を進めるとともに、前年度に新たに見出した出雲調査旅行旅日記の分析を進める。また前年度未着手だった風土記を引用した諸書の調査、収集を進めるとともに、『出雲風土記仮字書』の分析にも着手し、『出雲風土記抄』から『出雲風土記仮字書』への展開過程の解明をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初予定の調査出張の一部が実施できなかったことにより、次年度使用額が生じた。 (計画) 当年度実施できなかった一部の調査出張を次年度に繰り延べるとともに、調査結果の分析に必要な図書の費用も多く見積もられることにより、次年度分の調査旅費と図書費に繰り込んで使用する。
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