研究課題/領域番号 |
17K03070
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木島 孝之 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (20304850)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 民家 / 農民 / 住宅 / 近世 / 戦国 / 農村 / 土豪 / 人畜改帳 |
研究実績の概要 |
『寛永十年肥後人畜改帳』(合志郡・玉名郡・葦北郡)を全てデータベース化し、資料分析に使える形式への加工を模索した。現在、その最終調整中である。 研究過程で、新たに寛永二十一年の河内国更池村・富田林町村・碓井村・若江村の「家数人数改帳」を入手した。そこで、畿内先進地とされる前者(河内国)と後進地帯とされる肥後国の比較研究の必要性を感じ、河内国「寛永二十一年家数人数改帳」のデータベース化を行っている最中である。 肥後国と河内国の建屋の構成を俯瞰すると、河内国には肥後国に支配的に見られる釜屋と居屋の分棟形式が見られず、釜屋と居屋を一棟化した大棟形式が支配的である、つまり、河内国では全国を覆っていたであろう釜屋と居屋の分棟形式が寛永後期段階で大棟一棟形式に移行する展開を迎えていたのではないかという予見を得た。更に、この現象には、両国間に見られる隷属・支配下農民(名子・下人・門百姓)の存在形態の差異が相関するのではないかという予見を得た。 室町期の移行とされている箱木家住宅第Ⅰ期遺構については、その年代根拠である遺物(唐津)の編年観の見直しから、江戸初期の所産とみるのが妥当と考えた。そして、『寛永十年肥後人畜改帳』と河内国「寛永二十一年家数人数改帳」との比較材料となると考えた。これにより、箱木家住宅の印象から、小型であると考えられてきた戦国期・江戸初期土豪住宅について、一方では河内国「寛永二十一年家数人数改帳」に見える梁間4~5間、桁行7~11間の大棟一棟形式の巨大な事例の並存を考える必要が生じた。この意味は考察中である。予見として、高30~50石クラスの富農であっても、人力に頼る土地生産収入が主力の段階では、病気・怪我等での家内労働力の欠損や働き手の成長による浮沈が思いのほか激しく、請高の差が長期の維持管理を必要とする住居の規模には即座に投影されにくかったのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度の推進方策に記したとおり、9月の大学移転と安川邸の追加調査に伴う作業・雑務によって、予定していた研究時間が取れなかった。また、予想外の事態として、大学移転を機に所属学科の事務職員数が削減されその分の学務事務作業が急に賦課されることになったために、10月以降も思うように研究時間が取れなかった。そのため、大幅に研究予定が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
所属学科の事務職員の削減による学務事務作業賦課の状態は今後も続く。よって、研究の遅れの解消は難しい。 今年度は、最終年度であるので、3月か4月にはまとまった成果を学会・研究会等の研究の場で研究発表する予定である。なお、作成中のデータの紙媒体のサイズ・頁数が多く、学会・研究会誌の体裁には収まらない。よって、私家版での報告書作成を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定外の学務事務作業の賦課により、神奈川県への出張予定を延期したため。
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