研究協力者を含むメンバー5人全員の研究会を行なうとともに、県内各地の港湾・神社・交通関連遺跡や、湖北地域の環境変化を確認する調査を適宜実施した。安土城考古博物館の「塩津港遺跡発掘調査成果展」および滋賀県埋蔵文化財センターでの塩津港遺跡の特別陳列に協力し、研究代表者の水野および研究協力者の横田・濱は、博物館成果展にともなう講演も行った。 滋賀県立図書館・長浜城歴史博物館などで、塩津周辺地域の歴史・民俗などに関わる文献史料を収集・整理するとともに、琵琶湖・近江の交通関係史料の調査を行った。特に、内陸の河川沿いに移動していたことが強く想定される中世後期・近世初期の港を復原するための調査に力点を置いた。あわせて、琵琶湖および各地の津湊関係遺跡や津湊を守護する宗教施設の発掘調査事例などの収集・比較を進めた。また石造物の文字解読に成果を上げていた光拓本技術によって、起請文木札を解読できるかの実験を行った。 それとともに、全国的な視点から塩津港と密接な関係にあった日本海側の港湾実態の検討を進めた。拠点的位置にあった越前三国湊、出雲杵築浦・美保関、および出羽最上川の川津左沢・長井の個別調査を実施し、港湾の立地と変化の実態を検討し、東日本・北日本と畿内の接点となる近江の交通・流通上の役割を確認した。 これらの研究成果は、メンバー全員の5本の論文に序章・終章を加えた全236ページの水野編『よみがえる港・塩津』にまとめ、3月末に滋賀県のサンライズ出版から出版した。
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