本研究は「初期女院」(1~18番目の女院の定義)のなかでも后位と連動せずに生み出された女院12人をピックアップして、女院の創出=院号宣下前後の状況を分析することによって、各女院の院号宣下を実現した各王権が迫られていた課題を明らかにするものである。 そのための方法としての、1史料蒐集については、最終年度に「院号定部類記」がさらに諸本あることが判明したため、底本を前年度までに東山御文庫本から「内閣文庫本」に変更した。したがって「内閣文庫本」の「院号定部類記」(該当女院分)の翻刻作業が中心となった。「内閣文庫本」を底本とした理由は、写本画像をインターネット公開しており、一般的に最も利用しやすいからである。 前年残していた八条院・建春門院などの翻刻を終わらせ、その他ピックアップした女院について「内閣文庫本」を底本とした翻刻をしなおした。それにともない「院号定部類記」の諸本調査が必要となり、それも合わせて実施した。 2史料分析については、全12女院それぞれの院号宣下時の状況を、王権・東アジア世界という視点をもちつつ、基礎情報データベースの作成とともに分析した。 3研究成果の公表としては、まずは1の「内閣文庫本」を底本とした「院号定部類記」の翻刻の公表が、今後の研究進展の寄与するものであるため、ピックアップした女院についての翻刻と、2史料分析による成果の一部を「女院からみる中世王権の特徴―院号宣下の背景と経緯の検討を通して―研究成果報告書」としてまとめ、印刷・発行した。
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