研究課題/領域番号 |
17K03075
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中井 真木 明治大学, 大学院, 特任講師 (30631329)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 助無智秘抄 / 餝抄 / 次将装束抄 |
研究実績の概要 |
本年度は、新潟大学附属図書館、内藤記念くすり博物館図書室、京都大学附属図書館、京都府立京都学・歴彩館京都総合閲覧室を訪問し、写本調査にあたった。特に新潟大学や内藤記念くすり博物館の蔵書は、日本古典籍総合目録データベースに登録されているものの、書名や書誌が一般的なものと十分に結び付けられていないため、中世の装束書と思われる蔵書の内容を調査し、『助無智秘抄』『餝抄』のほか、『満佐須計装束抄』『布衣記』『西三条装束抄』『連阿口伝抄』『当家装束着用次第』等の所蔵を確認した。 並行して本文研究も進めた。上記調査において、『助無智秘抄』『次将装束抄』『餝抄』の注目すべき善本は多くはなかったが、特に『助無智秘抄』については、伝本研究のための資料を多く蓄積できた。なかでも京都大学の所蔵する『助無智秘抄』4種は、それぞれ書物の大きさや系統が異なり、複数の伝本ルートを探る手がかりとなることが期待される。他機関での調査結果ともあわせて、平仮名本、片仮名本の書写過程を検討することが最優先課題であることがわかり、これに着手した。また、古写本である陽明文庫蔵本と、これを補う宮内庁書陵部等の蔵本の本文研究を進めた。 調査ではまた、『助無智秘抄』『餝抄』『次将装束抄』それぞれの流布範囲や受容層の違いについても若干の知見を得られた。多くの写本に、書写者が熱心に内容を研究した様子がうかがわれ、江戸時代に装束書がどのように受容されたかを知る資料が蓄積できた。特に新潟大学所蔵の、伊勢貞丈書写の奥書を持つ『年中行事装束抄』(『助無智秘抄』)や、京都府の柳原家旧蔵と推測される蔵書等が注目される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度より勤務先と職位が変わり、科学研究費応募時点と研究環境が大きく変わった。特に、非常勤講師とあわせて、講義を週8~9時限担当することとなり、その多くが初めて担当する科目であったため、研究に割ける時間と労力はごく限られた。そのため、研究計画を縮小し、いくつかの機関へ出張して、『助無智秘抄』『次将装束抄』『餝抄』等の写本を検討するとともに、『助無智秘抄』の本文研究をできる範囲で進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
『助無智秘抄』の本文研究が予定より遅れているため、これに優先的に取り組む。あわせて、『次将装束抄』の本文研究を進め、『餝抄』や藤原定家の日記『明月記』との比較を通して、装束に関する情報がどのように収集され、その情報のうちどのようなものが共有され、どのようなものが秘匿されたかについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度より勤務先と職位が変わり、科学研究費応募時点と研究環境が大きく変わった。非常勤講師とあわせて、初めて担当する講義を週8~9コマ担当することとなり、本研究に割けるエフォート率が大きく減少した。そのため、研究計画を縮小せざるを得ず、研究費の使用額を減じた。次年度は講義にもある程度馴れ、非常勤講師の勤務時間数も若干減少する予定であるので、当初の計画に準じたエフォート率で研究にあたる計画である。次年度使用額については、当該年度中に実施できなかった写本調査(出張旅費等)および本文研究(関連する文献の影印本や翻の購入等)への支出にあてる。
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