「平安装束」の実態を知るために広く利用される文献に、12世紀以降に作られた、装束に関するマニュアル(装束書)があるが、18ー19世紀に編纂された不備の多いテキストが研究に用いられることが多く、研究が遅れている。本課題では、12世紀後半に成立した『助無智秘抄』について、複数の写本を検討し、よりオリジナルに近い本文を得た。また、その内容を検討し、成立背景について考察した。加えて、18世紀末以降、武家出身の江戸の故実家たちが考証的な研究を進めたことで、朝廷社会の外に知識が共有され、再解釈の対象となっていった様相を明らかにした。
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