研究課題/領域番号 |
17K03080
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
赤澤 春彦 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (90710559)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 陰陽道 / 陰陽家 / 地方暦 / 年号 / 改元 |
研究実績の概要 |
本年度は陰陽道の地域的展開過程を考える対象として主に年号、暦に焦点を据えて研究に取り組んだ。まず、年号については、日本前近代における改元の特質について検討し、改元にさいする陰陽道の役割を史料上から確認した結果、①祥瑞・怪異に対する占い、②改元の諸儀式にかかる日次勘申、③甲子・辛酉改元への勘申、④甲子・辛酉改元時に行う海若祭の4つがあることを明らかにした。その中で注目したのが辛酉年・甲子年において革命・革令思想に基づいて行う改元である。国立公文書館内閣文庫、東京大学史料編纂所、宮内庁書陵部などに残る革命革令改元の史料を調査し、10世紀から17世紀前半までの陰陽道と暦道の勘申史料を翻刻・精査し、辛酉革命・甲子革令における陰陽家の役割と特質について考察した。その成果は国立歴史民俗博物館で行われた国際シンポジウム「年号と東アジアの思想と文化“The Name of Era, a Mirror of the Thought and Culture of East Asia”」(2017年10月21日、22日)において「日本中世における改元と陰陽家」と題して発表した。今後は年号の地域的展開について中世以降、各地に展開する私年号との関わりを視野に入れながら検討する。 次に暦については地方への頒暦のありかた及び地方暦に関わる史料を収集した。主に中世後期以降、東国や九州には独自の暦が展開していたことはすでに先行研究で明らかにされているが、これらの暦の作成方法、京暦との差異、頒布方法などについて検討するため、時代の枠組みを超えて様々な事例を収集する必要があると考える。本年は尚古集成館において薩摩暦の史料調査を行い、また国立歴史民俗博物館が所蔵する吉川家文書の調査も行った。 このほかの研究としては中世における病の治療に陰陽道がどのように関わっていたのかについて研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は分析視角を年号および暦にしぼって史料収集を進めた。 まず、年号・改元の分野では、上半期に主に史料調査を行い研究環境を整えた。具体的には国立公文書館内閣文庫、東京大学史料編纂所、宮内庁書陵部など複数機関をまたいだ史料調査を行い、未翻刻の史料を集めることができたのは一定の成果として挙げられる。とりわけ国立公文書館では19冊に及ぶ大量の革暦類史料の複写データを得ることができた。この中には15世紀に作製されたと推定される革暦類の原本も含まれる。 加えて、これらの調査をもとに国際シンポジウムにおいて研究を発表できたことも成果であろう。なお、本報告は2019年に論文集の一部として刊行されることが決定しており、2018年度の前半に脱稿する予定である。 次に2017年度下半期は主に暦の研究を進めた。研究の素材となる史料の収集に努め、尚古集成館、国立歴史民俗博物館で原本を閲覧・調査することができた。今後も史料収集を進めながら、研究報告や論文などで成果を公開していく予定である。 また、同時に日本中世における病と治療の方法として、陰陽道の呪術がどのように用いられていたのかについて史料を収集し、研究報告を行った。本成果は科研「前近代における病気治療と呪術」(研究代表者:小山聡子)の共同研究として行っている課題であるが、本科研にも密接に関連するテーマである。本科研と併せて研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度に分析視角として用いた年号、暦のうち、年号については、研究発表を2018年度中に論文化することで一段落としたい。ただし、暦については史料を収集している途中なので、2018年度も継続して行う。また、中世における暦と陰陽道についてまとめて発表する予定である。 また、これまで研究を進めてきた宇佐八幡宮の陰陽師については、2019年に刊行予定の論文集に掲載することが決定しているので、2018年中に脱稿する予定である。このほか、2018年度中に研究報告を2件、論文を3本執筆する。 また、共同研究者を務めている科研「前近代における病気治療と呪術」(研究代表者:小山聡子)の成果は本研究にも密接に関連する。ここで得られた成果を、本研究では地域的展開という視角で分析し、民間信仰の地域的展開を考察する上での重要な課題の一つとしたい。
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