研究課題/領域番号 |
17K03082
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
苅米 一志 就実大学, 人文科学部, 教授 (60334017)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中世 / 瀬戸内海 / 寺社縁起 / 観音 / 舟運 / 対外貿易 |
研究実績の概要 |
瀬戸内海地域における自治体史の史料編(中世)から寺社縁起を抽出し、これをデジタルデータ化して、すべての縁起についてその構成要素を検討した。対象とした史料群は、『兵庫県史』『岡山県古文書集』『広島県史』『香川県史』『愛媛県史』『山口県史』および『平安遺文』『鎌倉遺文』『南北朝遺文』である。これらの調査と平行して、東京国立博物館、金沢文庫、京都府立総合資料館(歴彩館)において原本・写真帳などの確認を行ない、既存の活字資料の補訂を行なった。構成要素のキーワードとしては、瀬戸内海舟運、中国・朝鮮半島、観音信仰、女人信仰、竜王などの海洋神、竜宮などの海中他界といったものを確認した。特に瀬戸内海地域における寺社においては観音を本尊とするものが多く、その由来については、しばしば女性が発願主となること、船で観音仏を運んだとされること、観音による守護の証として何らかの危難を逃れたとされること、竜王や弁財天など観音の化身によって救われたとされること、などの要素が色濃く確認された。これには長谷観音縁起の影響が強く見受けられ、平安末期以降、長谷観音の伝達者が舟運によって瀬戸内海の東西にわたり広く布教活動を行なっていたことが推測された。また、観音仏を載せた船が、特定の港で動かなくなるという要素については、中国の寧波港に近い普陀山島における観音信仰の影響がうかがわれ、遣唐使船や日宋貿易船によってそれらの要素がもたらされたことが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に活字資料の整理については良好な進捗状況にあり、構成要素の抽出と考察についても順調である。一方で、現地の寺社における祭礼の観察については、昨年度まで重要管理職にあったため日程を組むことに苦慮し、予定通りの件数には至っていない。本年度からは、他管理職に異動し、用務が軽減される予定であるので、特に現地調査について遅れを取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
瀬戸内海地域を対象とした史料の蓄積を生かすため、四国南部、九州北部まで対象を広げることも視野に入れる。さらに遅れている現地の調査についても、日程を調整して多くの日数を割けるようにしたい。史料についてはデジタルデータ化を進め、大学研究所とも連繋して一般公開まで進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査について多くの日数の予定を組むことが出来ず、史料所蔵機関への1泊程度の研究出張が多くなったため、残額が生じた。これを2019年度に組み入れ、特に現地調査への旅費として使用する予定である。
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