輪島市・能登町・穴水町・珠洲市に分布する奥能登の真言宗結衆寺院(町野・中居・木郎の三結衆)が所蔵する、資料や典籍・仏像・仏画・墓石などを中心に、写真撮影・採寸・銘文の記録などの調査を実施し、各寺院の所蔵資料のデータ収集を行うとともに、各寺院の資料整理・保存作業を実施した。対象とした寺院は、以前の科研費事業で取り組んだ町野結衆寺院の中では、追加調査・整理を行った輪島市の天王寺・八幡寺・岩倉寺・永林寺、調査途中となっていた輪島市の西光寺・金蔵寺、未調査となっていた輪島市の高田寺・佐野寺、能登町の法華寺が挙げられる。中居結衆では穴水町の地福院・一乗院・千手院・明泉寺・来迎寺、木郎結衆では能登町の不動寺、珠洲市の法住寺が挙げられる。また、以前の科研費事業による調査で、輪島市の金蔵寺から和歌山県の高野山大学図書館、京都府の種智院大学図書館へ資料の寄贈が行われていることが確認されていたため、これらの機関の協力を得て、現存する資料の追跡調査を実施した。更に調査の過程の中で、能登の真言宗寺院と歴史的に深い関わりを持つ和歌山県の高野山親王院に所蔵する能登関係資料の一部を閲覧・調査する機会も得た。これらの調査は3年間でのべ103日間、調査資料点数6885点となった。 こうした調査の経過や得た知見を学会等で発表すると共に、最終年度には公開シンポジウムを実施し、報告3本、パネルディスカッションを通して、各寺院の関係者、檀信徒の方々、地域の方々、研究機関・研究者の方々のご意見を頂いた。こうした活動により奥能登結衆寺院の現在の活動状況、資料の残存状況、各寺院の歴史、奥能登の真言宗僧侶の活動と動向などが明らかとなってきており、実施した調査の概要やデータ、研究成果を『報告書』(387頁)としてまとめ、関係の寺院や地域の図書館・研究機関・研究者等に配付することにより広く公開し、研究の深化を図ることとした。
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