叡尊と忍性は鎌倉時代(13 世紀)の西大寺系律宗の僧侶である。両者はハンセン病患者や貧窮者に対する組織的な救済活動の先駆者として有名である。彼らの活動はこれまで伝記類で説明されてきたが、本研究では考古資料や仏像断片、石造物等の物質資料をもとに組織の実態を究明するものである。特筆される成果として、忍性墓出土の大量の分骨容器の分析から、僧俗貴賤男女を問わず東北から近畿まで広がる人物が活動に与していることが判明した。これは造仏や石造塔建立などに組織される結衆のしくみと共通点があり、ひいては律宗寺院が全国に広がる基盤ともなったとみられ、救済と布教を同時に進める律宗の活動戦略の根幹であったと考えられた。
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