研究課題/領域番号 |
17K03088
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研究機関 | 九州歴史資料館 |
研究代表者 |
松川 博一 九州歴史資料館, 学芸調査室, 研究員(移行) (40446886)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大宰府 / 官衙 / 官司 |
研究実績の概要 |
第2年次の平成30年度は、集成した大宰府の「司」関係の史料の検討を行い、諸司の役割や構成について検討を行った。 ①史料における大宰府の「諸司」の用例について検討することにより、奈良時代の大宰府において「諸司」という概念がすでに存在したことを明らかにした。あわせて、大宰府において諸司印が早期に成立した理由についても中央における諸司印の成立の契機と照らし合わせることで考察を深めることができた。 ②大宰府政庁周辺官衙出土文字資料だけでなく、周辺遺跡の出土文字資料の集成も拡大して行うことで、「城司」や「匠司」の墨書土器を検討材料として加えることができた。また、大宰府関連の史料に加えて、同じく被管官司を擁する斎宮寮関係の史料との比較検討をあわせて行うことで奈良時代にすでに十二の「司」が存在していた可能性が高いことを指摘できた。 ③最新の発掘成果である蔵司地区官衙跡の遺構の検討と中央の大蔵省との比較を通じて蔵司の役割や構成について現段階での見解を明らかにした。さらにすでに調査研究が進んでいる不丁地区官衙跡のついても新知見を公表している。また、考古専門職員との協業により大宰府政庁周辺官衙跡の変遷について一定の見通しを得ることが」できた。 以上の成果については、論文「大宰府官司制論-被管官司の検討を中心に―」(『大宰府の研究』高志書院、2018年11月)や「出土文字資料で読み解く大宰府の軍制」(『都府楼』50号、2018年11月)で詳述しているほか、シンポジウム「大宰府史跡発掘調査50年」(太宰府市中央公民館、2018年11月10日)やシンポジウム「大宰府の官衙-大宰府政庁周辺官衙跡の調査から-」(九州国立博物館、2018年12月15日)などで報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度が大宰府史跡発掘50年の節目の年であることから、九州歴史資料館大宰府史跡発掘50年記念特別展「大宰府への道―古代都市と交通―」の開催やその記念図録のほか、大宰府史跡発掘50周年記念論文集刊行会編『大宰府の研究』の執筆や記念シンポジウム「大宰府史跡発掘調査50年」「展望・大宰府研究 大宰府の官衙―大宰府政庁周辺官衙跡の調査から―」・太宰府学講演会「大宰府とは何か―大宰府研究50年のあゆみ―」など成果発表の機会に恵まれた。 それにより大宰府の諸司関係の文献史料や出土文字史料の検討が予想以上に進んだ一方で、集成した史料の整理やデータ化などの作業が思い通りに進まなかった面も多少あるが、総体的には順調に進捗していると考えている
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今後の研究の推進方策 |
最終年次においては、研究補助員とともに集成史料の整理やデータ化などの地道な作業を重点的に進めるとともに、考古学の成果との更なる照合を連携研究者および協力者の助けを借りて精力的に行い、諸司の比定に努めたいと考えている。 「司」関係の資料の収集はほぼ完了しているが、さらに発展させて「政所」以外の「所」関連史料の収集にも努め、個別史料の検討はもとより、「司」と「所」の相違や関係について検討し理解を深めたいと考えている。 また、木簡についてもこれまでの検討や作業の成果をうけて、文献史学専門の連携研究者や協力者とともに再検討や報告の場を設けたいと考えている。その際には考古学の連携研究者や協力者にも参加してもらい、協業できれば思っている。 さらに多賀城の研究成果との比較にも取り組む計画である。 これまでに成果については、すでに展覧会やシンポジウムで報告しているので、今年度は、予定通り、研究成果報告書という形で公表するつもりでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料の整理や入力の作業が次年度に延期となり、人件費に未使用額が生じため
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