研究課題/領域番号 |
17K03088
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研究機関 | 九州歴史資料館 |
研究代表者 |
松川 博一 九州歴史資料館, 学芸調査室, 研究員(移行) (40446886)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大宰府 / 木簡 / 官衙 |
研究実績の概要 |
第3年次(令和元年)は第1・2年次の史料の集成・検討と発掘調査の成果を照合し、大宰府の被管官司について研究をまとめるとともに、中央官司や国府との比較を行い、大宰府官制の特徴を究明し、広く発信に努めた。 ①年度当初に元号が太宰府や万葉集ゆかりの「令和」に決定したことから、にわかに古代大宰府への関心が高まり、本研究成果を公表する機会が急増した。当館では関連展示「大宰府と万葉集」を開催したほか、講演会も行い約550名の方に参加頂いた。また、万葉学者・奈良大学教授上野誠氏を招いて講演会・対談も行った。ほかに10回以上の講演の機会があり、本研究成果を広く多くの方に知っていただく好機となった。 ②大宰府史跡の発掘担当者や関連市町村の文化財調査担当者、坂上康俊九州大学教授をはじめ九州の古代史研究者と大宰府研究会を開催して研究成果の検証と共有を図り、最新の調査研究成果の収集に努めた。その成果は、連携研究者の酒井芳司氏と研究協力者の大高広和氏とともに、12月7・8日に奈良文化財研究所で開催された第41回木簡学会研究集会のシンポジウム「大宰府と木簡」において発表し、平城京や国府との比較という点でも参加者から多くの貴重な意見を頂いた。その研究報告の内容は12月刊行予定の『木簡研究』最新号に発表予定である。 ③比較研究という点では、宮城県教育委員会の吉野武氏を招聘し、大宰府とともに律令国家の領袖ともいわれた多賀城との比較研究ができたことは大きかった。その成果は、2月28日に明治大学で開催の記念フォーラム「大宰府と多賀城」で発信する予定であったが、コロナウイルス感染拡大防止のために残念ながら開催を見送ることになった。 ④本研究成果の発信を契機として、現在、大宰府の官衙研究が活況を呈しており、この3月までに連携研究者である小田和利氏や西南学院大学名誉教授の高倉洋彰氏など、関連する論考が発表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・年度当初の「令和」ブームにより発表機会が増えて喜ばしい反面、それに関わる業務が繁多となり、十分な調査研究の時間を確保できなかったため。 ・現在進行中の大宰府蔵司跡の発掘調査の進展や最近活況を呈する大宰府官衙研究の関連論文の発表があり、その内容を研究に盛り込むことが時間的に難しかったため ・年度末のコロナウイルスの感染拡大防止のために、現地・資料調査などの調査活動の自粛や図書館・博物館閉館にともなう文献・資料確認をはじめとした研究活動への制約が加わったため。
以上のこともあり、1年間、研究期間を延長し、新しい成果や知見を盛り込みつつ、これまでの調査研究成果の精査および集約に努める所存である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、これまで集成した史資料の整理を効率的に行うとともに、大宰府の官衙に関わる最新の発掘調査および研究の成果をできるだけ盛り込む形で研究成果報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間が1年延長となったことから、研究成果報告書制作にかかる人件費と印刷費である。来年3月の発刊に向けて、作業を順調に進め、執行する予定である。
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