大宰府の官衙研究は、竹内理三氏の「大宰府政所考」(1956年)以降、個別の諸司諸所について専論した研究は数多くあったが、諸司についての総合的な研究はあまり行われてこなかった研究状況であった。本研究は文献史料だけでは解明が困難であったところ、50年にわたる大宰府史跡の発掘調査成果とのすり合わせを行うことで、大宰府の官司機構とその運営の実態を解明することができた。さらに今後、大宰府史跡の発掘調査や研究を進めていく上での視角や課題を提示することできた。これにより、古代官衙研究において平城京・平安京や多賀城・斎宮、各地の国府との比較研究の基盤が整ったことになる。
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