研究課題/領域番号 |
17K03092
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
千葉 真由美 茨城大学, 教育学部, 准教授 (50396933)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 百姓印 / 印判師 / 近世 / 生産・流通 / 村落 / 都市 |
研究実績の概要 |
本研究は、一般の民衆が広く印を所持するようになった近世、特に江戸時代の印を対象として、印の生産・流通の様相を明らかにするものである。また印を事例として、近世の民衆が必要とする「モノ」の動きに着目し、近世社会の特質を追究することを目的としている。 平成30年度は、主に京都・大坂の印判師の把握につとめることとした。京都・大坂それぞれの印判師の確認と製作した印の流通状況について、目録およびデータベース等によってデータを集積した。まず前年度における大坂の印判師の確認作業をふまえ、印判師によって出された刊本の所在調査を行った。また、金沢市立玉川図書館、徳島県立文書館、京都府立京都学・歴彩館、奈良県立図書情報館、秋田県公文書館、三重県総合博物館、長崎歴史文化博物館、山口県文書館などの各館で史料調査を実施し、関係史料の閲覧・撮影・複写を行った。調査によって三都の印判師と各地域における流通の特徴を、ある程度見通すことが可能となっており、引き続き対象地を広げてデータを集積しているところである。 さらに近世の印判師の系譜を有する旧家の聞き取り調査を金沢および京都にて実施し、現在に至る伝承や印判製作の様子等についての知見を得ることができた。 史料調査では、平成29年度に引き続き印判師による印の製作・販売の確認と共に、印の使用者の特定やおおよその使用年代を検討、印の流通について考察を進めている。また東北や九州など、三都からは遠方ともいえる地域の印の特徴についても合わせて検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、京都・大坂の印判師に関わる史料を対象として、各機関で公開しているデータベース検索や刊行目録等から悉皆的にデータを集積することができた。予定していた史料調査はおおむね実施することができ、また当初は予定していなかった秋田県や長崎県での調査、最終年度調査予定であった徳島県での調査も実施することができ、流通状況についての検討を広範囲で進めることが可能となっている。また旧家での聞き取り調査において、印判師の活動についての新たな知見を得られたことは大きな成果と考えている。 以上により、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、各機関が提供するインターネット検索と刊行目録によって確認できている関係史料のうち、未見の史料調査を行う。史料の閲覧・撮影・複写作業を進め、特に旧城下町でのデータ集積と調査も重点的に行う。また印判師による印の製作以外の活動についても、具体的な検討の素材を集めることとする。江戸・京都・大坂、各地域の印判師や印の流通の様相、その特質についての検討を引き続き進める予定である。
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