研究課題/領域番号 |
17K03103
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
鬼嶋 淳 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (60409612)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本近現代史 / 地域医療 / 地域福祉 / 医療生活協同組合 / 医療運動 |
研究実績の概要 |
本研究では、毎年度、2つの柱をたてて研究を進める計画にしている。第1は、都市近郊地域を対象とした事例分析である。第2は、農村地域に新分析対象地域を決定し、地域医療・地域福祉の展開について調査・研究を進めることである。 今年度は、第1の課題については、昨年度末に発表した「戦後日本の地域医療・福祉をめぐる運動―入間医療生活協同組合の模索」(『部落問題研究』第224、2018年3月)の内容を発展させ、これまで研究を蓄積してきた埼玉県入間地方の地域社会運動研究のなかに位置づける作業をおこなった。 1960年代から70年代初頭にかけて、都市化が急速にすすむ都市近郊農村地域における農村医療運動は、「新住民」の要望に応えて患者数を急増させたが、従来からの医療に恵まれない農村部住民への対応が弱くなったことから、批判が噴出した。しかしながら、1950年代の困難のなか診療活動を継続していたことに対する地域住民からの信頼に加えて、都市化に対応した運動の変化により財政的には安定の兆しが見え始めたことから、同運動は、それまで目標としながら手をつけることができなかった高度医療への対応や、診療以外の取り組み、―たとえば、診療所関係者が村会議員に進出することで、国民健康保険給付率引き上げ運動や「老人医療費無料化」への取り組むなど、をすすめることが可能となり、地域医療・福祉を充実させる地域構想を提出する人びとを育むこととなった。 第2の課題ついては、東北地方の分析を行うため、新庄市の雪の里情報館にて、「積雪地方農村経済調査所」の史料、および岩手県庁にて行政文書の閲覧・収集をした。また、島根県松江市本庄地区、八雲地区の地域医療・福祉関連の史料を収集し、分析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1の課題は、2019年度前半には成果発表をできる予定であり、おおむね順調である。第2の課題は、新分析調査地域の調査を本格的に開始できた点で、おおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
第1の課題は、研究書として成果を公開するとともに、研究成果を地域に還元できるように、史料の目録作成などをおこなう。 第2の課題は、収集した史料の分析を進めるとともに、研究会などで成果を報告していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度後半、第1の課題の成果をまとめることに予想以上に時間がかかったため、第2の課題に必要と計画していた山陰地方への調査を行えなかった。そのため、研究費が一部未使用となった。 2019年度は、第1の課題の成果発表の準備を終えたため、第2の課題に集中できる。早急に必要な文献を購入するとともに、調査・研究を進展させて成果を発表する予定である。
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