研究課題/領域番号 |
17K03104
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
源川 真希 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (10264574)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 都市再開発 / 首都改造 / ポピュリズム / 臨海副都心 / 都市政治 / 東京オリンピック / グローバルシティ |
研究実績の概要 |
本年度は、おもに国立公文書館、東京都公文書館で撮影した官庁関係の史料を分析した。それをもとに、これまでの研究成果の一部として、1964年の東京オリンピック後から、2020年頃までの東京の都市再開発の過程を概観した書籍の形にまとめた。この研究成果は、吉川弘文館から『首都改造 東京の再開発と都市政治』として刊行された(2020年4月20日)。内容は以下のとおりである。 本書においては、1.東京オリンピック後、高度経済成長期の都市再開発、それに美濃部革新都政のもとでの防災再開発計画の展開、2.1980年代の鈴木都政のもとでの臨海副都心開発、それにバブル経済と地価高騰が招いた諸問題、3.1990年代におけるバブル崩壊と地価下落、ならびに都市再開発政策の意味転換、最後に4.2000年代以後の都市再生政策の展開、特区制度の展開と再開発の一層の進展という内容を扱っている。 また都市再開発に関連する研究史の整理を実施した。都市再開発・都市改造研究の視座、日本近現代政治史のなかの都市再開発、歴史学研究との接点、という視点から政治学・社会学・都市工学・歴史学の諸分野での研究成果など幅広く目配りし、同時代史学会編集『同時代史研究』第12号(2019年12月)に「大転換のなかの東京 都市再開発と政治をめぐる研究状況」を執筆した。 そのほか、海外の都市再開発については、これまで継続しているウィーンにおける再開発の実態を検討するため、市役所図書館、都市開発部(第18部)で収集した史料を読んだ。一部は先の書籍と論文に生かされている。また史料の確認、新規での史料調査を2020年3月に予定していたが中止となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要のところで述べた通り、本課題にそくした基礎的な研究については、2020年4月下旬に書籍を刊行することができ、成果を世に問うところまでこぎつけた。また研究史の整理の面でもあるていど満足できる成果が達成されたと考えている。 ただし外国の都市との比較という点では、若干問題がある。つまり史料の確認、新規での史料調査を2020年3月に予定していた(3月8日~17日)。しかし新型コロナウイルスの発生により、調査対象地であるウィーン市役所図書室が閉室になるなど調査が難しくなった。そのため、2021年度に研究を継続する申請を行い、受理された。 また購入した文献のうち、英語、独語文献について講読の作業を残している。特にMartinelli,Moulaert,Novyの研究文献などは、空間の社会経済的分析方法、そのほかの都市の分析を含むので、なるべく早く読み切る必要があったように思う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ひきつづき研究課題にもとづいて、各論的に調査・研究をすすめていきたい。そのため民間ディベロッパーの動きなども、新たに史料をさがすつもりである。また特にこれまでの調査で、国立公文書館の史料を撮影してきたが、1980年代、1990年代の史料については、管轄官庁のファイルから基本的な施策の内容があまりわからない状態である。よって、とくに建設省、国土庁などの文書についてさらなる調査を進めていきたい。場合によっては開示請求などの方法も必要となるかもしれない。地価下落に対してどのような対応が模索されたかをさらに明らかにしたい。 また海外の都市との比較研究をさらに進める必要がある。一つは上記のとおり、ウィーン市役所関係資料の再調査を実現させたい。またMartinelli,Moulaert,Novyをはじめとして海外の研究業績を引き続き検討し、東京との比較の視点をさぐりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行のため予定していた、オーストリア共和国ウィーン市での都市再開発関係資料・文献の調査、撮影資料の確認作業が、本年2月頃からヨーロッパで始まったコロナウィルスの拡大により行えなかった。3月中旬になるころ、調査予定地であったウィーン市役所図書館等は閉鎖となった。 このような事情があり、次年度使用とせざるをえなかった。2020年に上記の調査を継続するために使用する予定である。また国立公文書館での史料調査、書籍等の消耗品として使用する可能性もある。
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