当該年度は、この課題の継続的な研究課題である、「1980年代後半から2000年代における東京を中心とした都市改造の歴史学的研究」とあわせて研究を進めた。 具体的には以下のとおりである(前出課題の「研究実績の概要」と重複する)。 1990年代のバブル経済崩壊と東京などの地価下落のなかで、それまでの地価抑制をめざした政策とは逆に地価上昇と、金融機関の不良債権解消をめざす方向性が打ち出された。同時にもともとは対米貿易黒字解消のために行われた規制緩和政策が、それまでの東京一極集中抑制から、再度の集中の容認を強く求め、工業等制限法の緩和・撤廃などを求めていく状況があった。 以上のなかでの都市再開発、首都圏基本計画などの動向について、国土審議会首都圏整備特別委員会計画部会(以下、計画部会とする)、規制緩和委員会・規制改革委員会での審議状況などに焦点をあてて分析した。その結果、計画部会では従来の「国土の均衡ある発展」や東京一極集中の是正という観点から、第5次首都圏基本計画の策定を行うのが基本的な路線であったが、規制改革委員会が東京一極集中を容認する方向での政策立案を求め、計画部会に政治的圧力をかけている様子がわかった。また従来は地方への工業の分散を求めた自民党も、この動きを次第に容認していくことが明らかとなった。こうして1999年の第5次首都圏基本計画は、東京への集中を一部是認するものとなり、また工業等制限法の緩和のちの廃止が進められる結果をもたらした。 以上の研究成果は、研究論文「第4次~第5次首都圏基本計画と東京一極集中 規制緩和と首都圏の変容」としてまとめられた。
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