2019年度はうたごえ運動に関する史料収集の対象範囲を高度経済成長期のみならず、戦後直後から近年まで広げ、また、うたごえ運動の関連史料についても収集し、戦後全般にわたる「うた」に範囲を広げて行った。 まず、沖縄との関係性である。うたごえ運動が本土復帰前の沖縄との関係性を強めていることを確認し、それに関する史料収集に努めた(たとえば、『うたごえ新聞』などの記事や討議資料など)。この検討によって、沖縄の歴史に注目し、それを基にした創作曲を盛んに作るなど、うたごえ運動における沖縄の位置づけが明らかとなった。 また、うたごえ運動と周辺運動との関係性にも注目した。戦後盛んであった勤労者音楽協議会(労音)との関係性については従来も若干ではあるが言及されてきたが、具体的にはどのような動きであったのかを、金沢労音の機関誌を検討するなかで、明らかにした。金沢労音は機関誌が1号からすべて保管されて閲覧できる状態にあり、地域労音の状況を知ることができる史料を有する。それによれば、例会でたびたびコーラスが取りあげられており、うたごえ運動もあった。また、それぞれの中心人物が重なっていたり、交流していたことを確認した。 本年度はまた、これまでの研究成果を国際学会で報告する機会もあった。うたごえ運動とは何か、その特性について報告を行い、討議によって課題がより深められた。これ以後、史料集の刊行や論文・著書の執筆を行う予定である。
|