研究課題/領域番号 |
17K03121
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
太田 敬子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (40221824)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イスラーム社会 / 異教徒支配 / マイノリティ / 東方キリスト教徒 / イスラーム法 |
研究実績の概要 |
平成29年度の具体的研究計画・研究方法として、研究目標のうちのムスリムの法学書における庇護民規定のデータベース化とイェルサレム王国における異教徒支配の具体的事例の収集整理は、予定通り進行した。特に東洋文庫他の国内研究機関に存在する史料や研究文献の収集と検討は一定の成果を得ることができたと考えている。その成果として、研究目標の1つとして上設定していた、庇護民規定の各条項がどの都市(または地域)降服条約の条項を反映しているのかを、歴史書・地理書・人名辞典の記述と対比してかなり明確にすることができた。具体的には、各規定の地域的・時系列的整理を行い、その由来をウマルもしくは初期のカリフに帰すことのできない条項を抽出し、それが付加された政治的・社会的背景を考察し、それを通して個別降服条約の規定から法典化への歴史的経緯を明確にするための方法論の検討まで進むことができた。 しかしながら、海外における文献収集と現地調査に関しては、予定通り進まなかった。現状ではエジプトのコプト博物館及びセント・カテリーナ修道院に所蔵されていると考えられる写本の調査は困難であるとの判断から、アンダルス(スペイン)における異教徒支配の事例を比較検討の対象として新たに加えるべく、2018年3月にスペイン出張を予定していたが、研究代表者の体調不良によって実行することができなかった。また、イスラエルにおける史料収集と現地調査は、日程的予算的に余裕がなかったため、次年度に繰り越すこととした。平成30年度前半に現地研究者と密接なコンタクトを取り、後半に調査に出かけることを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
国内で遂行できる史料収集及び文献研究は一定の成果を得ることができたが、海外における史料収集及び現地調査に関しては、研究代表者の体調不良のため、遂行することができなかった。そのため、平成29年度の目標として設定していた未所有の写本および文書史料の収集は大幅に遅れた状況であると考えている。その影響で、既に収集・検討を終えた史料との比較検討にまで至ることができず、平成29年度の研究で得ることのできた新たな知見は限られたものであったといわざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の遅れを取り戻すべく、海外における史料収集・文書調査に力を入れる予定である。平成30年度に予定していたエジプト及びイスラエルへの海外出張を通して、文献収集と現地調査を行うだけでなく、日程的に可能であれば平成29年度に遂行できなかったアンダルス(スペイン)における現地調査と文献収集を行い、異教徒統治政策に関する新たな比較検討の対象の開拓を進めていく予定である。エジプトの場合、セント・カテリーナ修道院における写本調査はまだ困難と考えられるが、コプト博物館及び国立文書館、カイロ大学を訪問して、それに代わる写本及びセント・カテリーナ写本に関する研究文献を調査する予定である。 併せて既に収集した史料や文書類のデータベース化を進め、それらに加えて国内でも入手可能な史料を東洋文庫ほかの研究機関をさらに綿密に調査して開拓したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の体調不良のため、3月に予定していた海外出張による史料収集と現地調査が遂行できなかった。体調不良は年度末まで続いたため、未使用額が生じた。次年度の使用計画としては、遂行できなかった海外出張を行い、研究計画の遅れを回復する予定である。
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