中国近代史を、軍事をめぐる制度と観念に着目しながら再検討することをめざした。まず、19世紀後半の清朝が如何なる軍事的なインパクトを受け、どのような改革を迫られていたのかについて論じた。曽国藩は、理念によって統率された軍隊の創出をめざしていたが、それは20世紀初頭の軍制改革において参照され、近代軍の精神的基盤を重視することの先駆とみなされた。また、辛亥革命にみる軍人の忠誠の問題について考察した。中華民国の初期大総統の就任儀礼について分析し、その軍事的な要素に注目した。そこには、従来の皇帝と異なり、中華民国の軍を統率する者としての立場を明確にする意味も込められていたといえる。
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