研究課題/領域番号 |
17K03125
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
松尾 有里子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 非常勤講師 (50598589)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イスラーム史 / オスマン帝国史 / 知識人 |
研究実績の概要 |
平成30年度に収集した史料の解読を引き続き行うとともに、これまでの研究成果と合わせて令和元年日本中東学会第35回年次大会(5月19日)で発表した。発表題目は「20世紀初頭イスタンブルにおける女性教師養成校(1909-1933)」(於 秋田大学)で、フロアから貴重な助言と指摘を得た。 この成果をもとに令和元年夏まで主に 18 世紀後半から 20 世紀初頭までのイルミエ関連の行政 文書、イスラム法廷台帳と遺産目録、財政文書の解読を行った。その結果の一部は7月に東京大学東洋文化研究所で行われたオスマン史研究会で発表した。その後、研究論文(英文)をまとめる作業を行なった。ただ論文執筆の際に、史料を再度検討する必要が生じ、秋~冬にトルコ共和国での現地調査を行うこととした。さらにウラマー家系の宗教寄進地以外 の資産形成については、先行研究がなく未開拓な分野であるため、トルコ人研究者の助言をもとにイスタンブル在住のエブッスード家所縁の人物へのコンタクトも模索し始めた。 令和元年後半期は上記のように現地調査に行く予定であったが、秋に体調を崩し、3月に海外調査を行う予定とした。調査準備期間には、「ことばと文化」47号(慶應義塾志木高校)に寄稿し、研究の一端を紹介し、社会への還元を行なった。しかし新型コロナウィルス感染拡大の影響で3月の研究調査を断念した。自粛活動期間中は、査読雑誌への英文論文の執筆に専念し、原稿をほぼ完成した。研究計画に変更が生じたため、研究期間をあと一年延長することとした。今後、現地調査が難しいようであれば、これまで収集した史料をもとに、近世~近代への移行期におけるオスマン帝国の支配層の資産の 運用、維持、継承という観点からエブッスード家の活動を整理、検討し、具体的なオスマン社会の変容の過程を検証することとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、令和元年5月の中東学会第35回年次大会での研究発表の後、令和元年秋から冬にかけて研究調査に行く予定であった。しかし、発表時フロアから貴重な助言と指摘を得て、研究内容を検討し、夏まで 18 世紀後半から 20 世紀初頭までのイルミエ関連の行政文書、イスラム法廷台帳と遺産目録、財政文書の解読を行った。その結果の一部は7月に東京大学東洋文化研究所で行われたオスマン史研究会で発表した。その後、研究論文(英文)をまとめる作業を始めたところ、体調を崩し、令和2年3月に海外調査を行うよう再度予定の変更を行なった。 調査へ出かけるまでの準備期間には、「ことばと文化」24号(慶應義塾志木高校)に寄稿し、研究の一端を紹介し、社会への還元を行なった。しかし新型コロナウィルス感染拡大の影響で3月の研究調査を断念した。自粛活動期間中は、査読雑誌への英文論文の執筆に専念し、原稿をほぼ完成した。研究計画に変更が生じたため、研究期間をあと一年延長することとした。 したがって、未だ予定していた現地調査が実現できない状況下にある。 現在は予定を一部変更し、これまでの調査と研究の成果を論文(英文、和文の二種)にまとめ、一本は提出済みで査読結果を待つ状況である。今後新型コロナウィルスの世界規模の感染拡大の危険が再度高まった場合には、すでに収集した史料に基づき、成果を発表し、一冊の本にまとめるべく準備をしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、現在のところ、最終年度に予定していた研究調査が行えるかどうか見通しが立っていない。令和元年度までに収集した史料を中心に解読作業を引き続き行うとともに、秋に日本オリエント学会で研究成果の一部を発表し、研究論文としてまとめる予定である。 令和2年度前半は、主に 16世紀末期から 20 世紀初頭までのイルミエ関連の行政文書、イスラム法廷台帳と遺産目録、財政文書の検討を再度行う。特に平成29年度に作成した同家に帰属したウラマーたちのプロソポグラフィーを新しい情報をもとに、再度見直し、新しい家系図を完成させる予定である。さらに3年間に参加し、発表した学会、シンポジウム、研究会等で、助言、指摘を受けた箇所を再検討しつつ、ウラマー家系の資産形成を具体的に明らかにしていきたい。 令和2年度後半期は、もし、秋季以降、トルコへの渡航が実現すれば、エブッスード家が勃興したチョルムで研究調査を行う予定である。そこでは、同家の宗教寄進財産の現存状況を把握するとともに、アンカラのワクフ総局文書館で宗教寄進財産の目録を調査したい。 以上の研究計画、作業を通じて、ウラマー家系を素材に、近世から近代にかけてのオスマン社会の特徴とその具体的な変容の過程を検証することが可能となろう。 研究が予定通り進まない場合の対応としては、インターネットで一部公開されている文書館史料の収集と解読、スカイプを利用した聞き取り調査など確実に実行可能な手段を選択できるよう準備している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度に予定していたトルコへの研究調査旅行が新型コロナウィルス感染拡大の影響で実施できなかった。令和2年度後半に再度研究調査の予定である。もし、実現不可能であれば、必要な文献の購入、国内での研究調査、及び英文校閲にかかる人件費にあてる予定である。
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