令和4年度は新型コロナウィルスの世界的流行の影響でこれまで断念していたトルコ共和国への調査を9月に行うことができた。この現地調査の準備として4月から8月にこれまで分析してきたオスマン語史料の再検討を行い、その一部を用いて英文論文を執筆し提出した。具体的には、オスマン知識人名望家家系のエブッスード家の人びとの17世紀から19世紀初頭に至るまでのオスマン帝国政府内外での活動を各々検討した。その結果、近世から近代にかけてのオスマン社会の変容の中で、当該家系のイスラーム知識人とその家族が影響力を有していた事実が明らかとなった。この論文は現在書籍化に向け編集中である。9月上旬においてトルコ共和国へ史料調査に出かけた。大統領府オスマン古文書館にてエブッスード家と女性史関連の新たな史料を閲読した。令和4年10月から令和5年3月の間は、まず令和2年度から取り組んで来たオスマン帝国近代の女性の教育と社会活動について「近代トルコ女性のリベルテを求めて」の題で執筆し、令和5年3月31日にIGシリーズ第5巻『記憶と記録からみる女性たちと百年』(明石書店)の中で発表された。同様の内容を令和5年3月に慶應義塾志木高等学校の『ことばと文化』27号に「近代トルコ女性の自由を求めて」の題で寄稿し、社会への還元を行った。さらに令和3年度から続いているオスマン帝国と女性についての新書の執筆も行なった。また、これまで収集した史料の分析をもとに、令和4年12月の九州史学会大会にて「オスマン帝国近代の投稿する女たち」を発表した。以上の研究を通じ一つの本にまとめていく予定である。
|