研究課題/領域番号 |
17K03127
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山内 民博 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40263991)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 韓国史 / 朝鮮史 / 身分制 / 地方史 / 北朝鮮 |
研究実績の概要 |
本研究課題「朝鮮北部地域社会史研究―19~20世紀初戸籍史料からの接近―」は、19世紀から20世紀初頭にかけての戸籍史料の分析をつうじて、朝鮮北部地域の社会編成および家族構造の特徴と、その歴史的変容を明らかにすることを目的としている。本研究は戸籍史料を中心とする史料の調査収集とその整理・分析が具体的な内容となる。 <史料の調査・整理> コロナウィルス感染症の影響で,国内および韓国での実地の史料調査はおこなえなかったが,関係機関で公開されているWeb上の史料を調査し,公刊されている関連史料集を購入した。また,前年度来,継続している咸鏡道洪原県の『洪城訴牒謄題』,咸鏡道『亀城郡戸籍』(1898年)のデータ整理を進めた。 <史料の分析と研究成果の公表> 本研究課題と関連した研究として,17世紀から19世紀にかけての朝鮮戸籍および戸籍上の周縁的社会集団について分析した『戸籍からみた朝鮮の周縁:17-19世紀の社会変動と僧・白丁』(知泉書館,2021年)を刊行した。本研究課題とかかわる主要な論点をあげると,①17世紀後半の五家作統制実施時期の戸籍編成のありかたは,僧・柳器匠・皮匠といった集団を含め良賤制的な把握を基本にしていたこと,②18世紀後半以降,良賤制的把握が崩れていくと同時に僧・柳器匠・皮匠など特定の集団が戸籍上で一般戸と明確に区別される傾向が現れること,③19世紀末の新式戸籍では良賤制(奴婢制)の廃止にともない民の一元的把握がめざされる一方で僧と屠漢は一般戸と異なる別種の戸籍に登載されたこと,④咸鏡道北部(関北)地域での屠牛慣行はほかとは異なっており,屠牛専業集団の有無を含め独自の性格をもっていたことなどを論じた。戸籍による社会編成を検討した基礎的研究であり,今後,北部地域に即した分析を深化させる基盤となろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルス感染症の影響で国内外での実地の史料調査はおこなえなかったが,史料の購入,史料の分析などは順調に進んでいる。 また,これまでの研究を総合して,朝鮮戸籍および戸籍上の周縁的社会集団に関する基礎的研究である単著を公刊することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引きつづき関係機関で公開されているWeb上の史料の調査や公刊されている関連史料集の収集をおこないつつ,状況が許せば韓国や国内諸機関での史料調査を実施する。 史料の分析については,新たに国内での所蔵が判明した『平安南道孟山郡戸籍大案』の検討・分析を中心に,同じ平安道の『亀城郡戸籍』などとも対比しつつ,北部地域の新式戸籍について一定の見通しを示した研究の公表をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書の購入などの結果、わずかな残額が生じた。次年度、物品費(図書購入費)にあてる予定である。
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