研究課題/領域番号 |
17K03132
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
真下 裕之 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70303899)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 南アジア / 近世 / 歴史叙述 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ムガル帝国時代(近世)に著されたペルシア語の地方史叙述にかかる文献資料を主たる調査対象として、帝国の威信を背景にした歴史叙述が南アジア各地方の過去を帝国の秩序に再編成していったプロセスを解明することが目的である。また主要なインド諸語の文献群における歴史叙述を採集することによって、近世南アジアにおける地方史叙述の形成と展開に関する総合的な基礎資料群を得ることも本研究課題の目的である。 2019年度においては、昨年度同様、ペルシア語の歴史文献を根拠資料として、各地方史に関する歴史叙述を整理する作業を進めた。インド通史の一部を構成するものから、単体として著作された地方歴史書に至るまで、網羅的に調査対象とした。一方、近代インド諸語文献については昨年度までに収集した、初動の参考資料となるべきカタログ、参考書誌をもとに、研究に資する個別の一次文献群の検討を進めた。さらに、以上の一次資料群に加え、最新の研究動向をフォローするため、研究課題に直接、間接に関連する二次資料も併せて整備した。 以上のような文献相互の関係性についての関心から、ムガル帝国宮廷における典籍の翻訳をキリスト教典籍のペルシア語訳に即して検討した研究論文を公表した。またむがる帝国宮廷において行われた書物の書写や書道に関するペルシア語文献の訳注は、本研究課題にも密接な関係を持つ研究成果である。さらにそのような文化事業が行われた舞台である帝国宮廷の贈与儀礼を、国家制度史の観点から分析した研究論文も公表したが、これは本研究課題の時代背景を構築することに資するものでもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、年度後半に、ウルドゥー語関係資料の調査を念頭に、カラーチー(パキスタン)ないしラホール(同)での調査を計画していたが、Covid-19感染症拡大の影響により、これを中止せざるをえなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況が「やや遅れている」ことに鑑み、2020年度において、研究成果のとりまとめを意識しつつ、外国における実地調査を加速する。ただし、Covid-19感染症拡大の影響がなお続く可能性も考慮して、すでに整備済みの資料の整理・分析、および欧州の研究機関に所蔵される関係資料を、マイクロフィルムやデジタル画像等を購入し整理・分析する作業に、年度前半は注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度中に計画していた外国出張による調査を Covid-19 感染症拡大の影響により中止したため、これに充てるべき予算を次年度に繰り越したため。 この外国出張は2020年度のできるだけ早い時期に、同感染症の状況に注意ししつつ実施し、当の予算を使用する計画である。
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