研究課題/領域番号 |
17K03133
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
馬 彪 山口大学, 大学院東アジア研究科, 教授 (20346539)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 王莽 / 新帝国 / 標準化 / 好是古非今 / 因而不改 |
研究実績の概要 |
初年度であるH29年度は本研究の基礎となる、「新」帝国内地出土文物・文字と文献史料との検証から順調に行った。 1)王莽「新」帝国内地、すなわち王莽の故郷の河北省大名県を含む地域における出土文物・文字の調査と研究からスタートした。特に王莽時代に営造した副都洛陽の都市構造は、なぜ後に歴代王朝の首都空間構造の原形となったかということを実証し、その王莽の標準化改制との関わりを重点的に調査した。これにより、「新」帝国時代における典型的な「標準化」改革のモデルを確認した。すなわち、王莽は「好是古非今」を出発点として、漢王朝の帝国制度について大改造を初めてから、改革によって標準化的な帝国システムを立ち上げて、失敗もはさんだが、のちの劉秀政権が「因而不改」によって継続したモデルの存在を明らかにした。 2)文献と考古両方の史料を整理したうえで王莽の改革によって創った標準化制度は、帝国の「礼楽」(天子の「六宗」・玉牒の封禪・明堂・九廟の礼)、「文学」(古文経・讖学)、「歴数」(符瑞・赤帝の説)、「職官」(三公の号・「稽首」の礼)、「食貨」(租税・限田・斛制)、「方域」(「土中」の制、「両都」の制)、「蕃夷」(賜印の制・辺郡の制)などの新しい制度モデルであるとの新しい説を提出した。 3)H29年度の調査・研究の成果は、①「漢元帝以降前漢の「是古非今を好む」改革について―新莽復古改革の由来も含めて―」『異文化研究』2018年3月第12号pp26-46;②「光武の新莽に「因りて改めず」についての研究―「漢承秦制」と同じく「後漢承新莽制」も存在する説の提出―」『山口大学文学会志』第68巻2018年3月pp1-30である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究は研究計画に従い、順調に進んでいる。 事前の資料準備や個所の下調べにより、現地の研究者との連絡がスムーズに行えたこと、大学関係者から様々な協力を得られていることが、研究が順調に進展している理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度と同様に、H30年度も計画の通り推進する予定である。具体的には以下の通りとする。 1.新帝国の西域都護府地域、すなわち前漢以来新たに占領したエリアに対して、「新」帝国が標準化を実施する特徴を見出した方針に従って、実地踏査することにより王莽標準化政策の実像を具体的に解明する。 2.漢長城沿線の遺跡調査によって、匈奴・北胡に関する地域の遺跡・文物を調べ、その「新」の標準化政策からの影響はあったかとの課題について集中的に取り組む。 3.山東半島と渤海湾そして韓国等を一地域として調査することによって、帝国の標準化制度の実施とその地域特徴を解明する。 つまり、新帝国における辺境の国防、外国・外民族との外交政策、また領土経営に関する標準化した新しい政策などを明らかにすることを目的とする。
|