R1年度研究は「新」帝国の各地域に残された出土文物・文字と文献史料の検証を行うことと研究全体をまとめることもできた。 H30年度と同様にR1年度も計画どおり推進したが、具体的には以下の研究成果を得た。1.過去2年における中国の黄河と長江中上游地域での調査とは違い、R1年度は長江下流域各省や西北方の少数民族自治区における王莽時代の文物調査を行った。とりわけ前漢末~後漢初期の文物に着目し、貨幣・銅鏡・印鑑・遺跡などを調査することができた。2.一連の調査によって数千枚の文物や遺跡の写真を得て、十数万文字の研究ノートを取った。それらの一級資料によって該当研究を一層推進することができた。3.直接に関連する論文は3本が完成した。その研究内容は、①みやこ長安の大改造は王莽改制のスタートであるとは「王莽の長安都改造について」という論文で明らかにした。②「王莽における封国制改革の研究」という論文で旧封建制を破壊しながら新封建制を作ったのは王莽の封国制改革の結果であり、かれが創立した「空名」封国制は後時代の封建制の先駆者となったと主張した。③「試論新(莽)皇帝之改元、即位與建國宣言」という論文で王莽が即位・建国式典の政治空間と建国の宣言とも復元することができたうえに、王莽は「禅譲」政権の成立と建国宣言の具体像を明らかにした。 最終年度なので、三年間の研究全体によってわかった本研究の意義及び重要性をまとめてみた。その結論は「王莽改制」の意義が前漢(前9~8)王朝の破綻に対して、中央と地方の政治、内政と外交等のあらゆる分野での帝国制度の「標準化」にあった点は重要であり、その改革は失敗したにもかかわらず、のち2千年の中華帝国の諸制度への標準を作ったことは重要である。
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