研究課題/領域番号 |
17K03134
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
吉尾 寛 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 教授 (40158390)
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研究分担者 |
堀 美菜 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 講師 (60582476)
松浦 章 関西大学, 付置研究所, 研究員 (70121895)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 黒潮 / 台湾 / 高知 / 漁業 / 移民 |
研究実績の概要 |
①黒潮流域圏の諸外国(台湾、フィリピン、インドネシア等)の人文社会科学、自然科学の研究者が参加する国際シンポジウムで本研究の概要を発表し(ポスターセッション)、頂いた意見、質問から、特に本流域圏の漁村社会のもつ特徴解明への手がかりを得た。 ②代表者吉尾が研究協力者公文豪氏(高知近代史研究会会長)の協力を得て、当該の漁民の出身地、特に高知県土佐清水市(松尾、中ノ浜等)、ならびに同東洋町におけるそれぞれの郷土史研究会の主要なメンバーに本研究の概要を伝え、前者については9月下旬に予備調査を実施した。その過程で、両親(漁業に従事)が当地区出身で自身が南方澳で生まれた女性に偶然に会い、聴き取り調査の第一候補者を得た。また、2018年3月には土佐清水市郷土史同好会に招請され、本研究の概要と意義を会員に広く伝えることができた。いずれも今後に繋がる成果であった。 ③2017年8月、台湾側の研究協力者台湾海洋大学卞鳳圭教授と、宜蘭大学の教授(漁業史)の協力を得て、現地南方澳を訪問し、かつ当地の郷土史家数名※に対して本研究の概要を説明した。そこで、当地の方々からは、日治時代の高知県等日本人漁民の移住は当郷土史における有名な話であると説明をうけた。※南方澳商圏発展協会理事長兼南方澳文史工作室・三剛鉄工廠文物館長(日拠時代父親が船の修理工場を営む:中心的人物)、元南興社区発展協会理事長、宜蘭県大同郷公所・泰雅生活館駐館規画員等。 さらに、上記の方の先導により、「移民村」の家屋の一部(南興里・南興路56付近 家屋の上半分(下は埋立てられて埋没)、および家屋群前後の路地等を実際に確認することができた。台湾の現地においても今後への人的繋がりを作ることできた。 ④2017年12月、研究協力者卞鳳圭教授の協力を得て台湾国立図書館で『台北州報』等、又宜蘭県史館で南方澳の漁業関係の地方志等を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①黒潮流域圏科学に関する国際シンポジウムにおいて本研究を紹介する機会を得、これまでなかった、海洋学を初めとする自然科学および学際的分野からアドバイスを得られた。 ②高知県内の関係する地区の、郷土史家および郷土史研究会に本研究の概要、意義を理解してもらい、これまで注目されてこなかった歴史的事実として受け止めていただいた。この意義に基づき、今後の聴き取り調査、文献調査における有力な協力者を得ることができた。 ③現地、台湾南方澳における郷土史家および郷土史研究会に本研究の概要、意義を理解してもらい、いわば当地では周知の事実について日本人が研究に着手しようとする意義を認めていただいた。この意義に基づき、今後の聴き取り調査、文献調査における有力な協力者を得ることができた。特に、日本人の「移民村」の家屋跡等が確認でき、大きな具体的な手がかりを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
①本年度構築できた、高知県内、方や台湾、南方澳側の協力者との人的ネットワークに基づいて、資料調査、聴き取り調査を本格的に進める。なお、資料調査においては、台湾の側で中央研究院台湾史研究所、台湾国立図書館、台湾大学図書館および宜蘭県史館等においても調査を進める。 ②調査の項目をこれまで以上に具体的に設定する。南方澳における高知県等日本人移民と現地の住民(「台湾人」、原住民)との関係に具体的に迫るため、例えば、漁法の伝授、副業を契機とする婦女子間の交流、学校の枠を超えた児童同士の交流、および日本人移住者と原住民との騒擾等々の項目を立て、各調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
①研究代表者吉尾寛が2017年秋季以降学部長として想定外の校務に追われたことにより、海外(特に欧米圏)の漁業移民に関する文献調査を企画、実施する時間が十分にとれず、さらには、本研究の分担者、国内外の協力者が一同に集まり活動方針を集中審議する機会を設けるに至らなかった。また、高知県内、又台湾の関係地域に直接出向く調査の回数も、最小限に止まった。 ②次年度は、①に記載した、未遂行、不十分な形に終わった研究活動を改めて実施、強化していく。
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