研究課題/領域番号 |
17K03134
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
吉尾 寛 高知大学, その他部局等(名誉教授), 名誉教授 (40158390)
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研究分担者 |
堀 美菜 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (60582476)
松浦 章 関西大学, 東西学術研究所, 客員研究員 (70121895)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 黒潮 / 台湾 / 日治時代 / 高知 / 宜蘭 / 蘇澳 / 漁業 / 移民 |
研究実績の概要 |
2020年8月1日に本研究代表者吉尾寛は台湾の開南大学から1年間の出張を終えて予定通り帰国し、本研究を以下のように再開した。 1)高知県内の移住者の家族・関係者に対する聴き取り調査について、地元新聞『高知新聞』が取り上げて記事にした(2020年10月24日朝刊第1面)。このことがきっかけとなり情報提供者が増えた。その結果、宜蘭蘇澳鎮南方澳への高知県漁民の移住に関する纏まった話(大正期から敗戦又引揚の事情まで)を3名から聴くことができ、話に上る家族の数は8家族に至った。又官営移住者だけでなく、いわゆる自由移民として南方澳に入った漁業者の家族の話を聴くことができた。特に「移民村」に関わって、官営移住者の居住地区と自由移民居住区は、これまで推測していたとおりそれぞれ別に存在することが略ぼ確認され、官営移住者の地区内の居住状況の特色も見えてきた。加えて「官・私」移住者の子供が通った蘇澳国民小学校における教育活動、更には当校の同窓会が戦後作られて当地を再訪したことなども分かってきた。 2)帰国後、研究協力者台湾海洋大学海洋文化研究所所長卞鳳奎教授の提案により、本研究の成果(中間的成果)を当大学の論叢に入れて(卞鳳奎總編審『海洋文化研究專輯』第二輯)刊行することになった。吉尾と研究分担者松浦章氏がそれに参画した。 3)帰国後、南方澳の在る宜蘭県の『宜蘭縣史館』が本研究について関心を寄せ、当館発行の学術雑誌『宜蘭文獻雑誌』に吉尾の旧稿(2019)を翻訳、かつ日本で入手できない資料を追加して発表した。 4)代表者吉尾は、高知県で開催された中・四国地区を対象とする学会(2020年度社会経済史学会・中国四国部会高知大会)のシンポジウムにおいて「海外移住・移民から見た高知(四国)近代史とその史料」の基調報告として、本研究の中間的纏めを公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、代表者の台湾の大学への出張により2019年8月から1年間中断し、2020年8月から再開された。又COVID-19の影響を受け(台湾での現地調査を中止)、さらには代表者の母親の介護活動が始まり、当初研究の進捗は楽観できない状況にあった。しかしながら、中断前の研究活動の成果が高知県のみならず台湾の宜蘭県からも注目されるところとなり、今後に繋がる交流も可能になった。その結果、情報提供者、成果報告の機会が増加し、業績数も前年度を上回った。全体としては「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
既に予定されている成果公表の機会を十全に活かし、本研究の結論―即ち「移民村」の労働と生活の実態の特徴並びにその黒潮流域圏交流史における位置について実証的具体的な手がかりを得る。 1)2020年が南方澳に近代漁港が構えられて100年となることを記念し、当地で国際学会(2021.9)蘭陽博物館)が催されることになった。この学会への参加(報告、論文の寄稿)を予定している。討議を通して、南方澳の漁業史に関わって高知県漁業移住者が漁法、経営形態並びにコミュニティの形成に対してどのような歴史的役割を果たしたか実証的な知見を得る。 2)「東アジア環境史協会」(Association for East Asia Environmental History)の国際学会のRountable(2021.9 京都大学 オンライン)で、分担者堀美菜氏と一緒に「黒潮流域圏交流史」という枠組みについて説明し、環境史の専門家より多くの批評、教示を得る。 3)以上の研究活動の上に、本研究の最終成果の公表の仕方について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、2019年8月から1年間代表者が台湾の開南大学に招聘されたことにより1年間中断し、2020年8月から再開した。加えてCOVID-19の影響(台湾現地での調査が出来なかった)を受け、さらには代表者の母親の介護活動が始まった。これらを原因として本年度に未使用金額が発生し、次年度使用額が生じた。次年度は、改めて台湾現地での調査活動を実施し、台湾での学会発表、研究交流を行いたい。そのための渡航費、調査費、資料購入費等として使用したい。また、研究成果の公開のための費用(一部)としても使う予定である。
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