研究課題/領域番号 |
17K03134
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
吉尾 寛 高知大学, その他部局等(名誉教授), 名誉教授 (40158390)
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研究分担者 |
堀 美菜 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (60582476)
松浦 章 関西大学, 東西学術研究所, 客員研究員 (70121895)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 黒潮 / 台湾 / 日治時代 / 高知 / 宜蘭 / 蘇澳 / 漁業 / 移民 |
研究実績の概要 |
2021年9月本研究の代表者吉尾寛は本同研究分担者の堀美菜と共に「The Sixth Biennial Conference of East Asian Environmental History 」(2021年9月7-10日、幹事校京都大学)のRoundtable(Asian and Oceanian environmental history in the future Asian pluralism and environmental diversity under the influences of the Pacific Ocean)で「黒潮流域圏」という枠組みについて解説した。その際この枠組みを用いて、日本統治時代の台湾の港町南方澳に当時の高知県(土佐清水市等)漁民が官営の組織移住した事実の歴史的特徴を明らかにした。さらには、土佐清水市と南方澳の新たな交流への模索にも言及した。 他方、移民の主要な故郷の一つ高知県土佐清水市は、目下新『土佐清水市史』(仮称 2023年刊行予定)を編纂しており、そこに「黒潮がつないだ台湾への移住」なる一項目を設けて当該事実を記載することを決定。吉尾が原稿を提出し、受理された。また、2021年宜蘭県文化局は南方澳開港100周年を記念して国際学術シンポジウム「2021南方澳漁港百週年國際學術研討會」を開催(2021年9月10・11日)。2020年に宜蘭縣史館が学術雑誌『宜蘭文獻雑誌』122号に吉尾の論文を翻訳し掲載したことを受けて、吉尾も招聘されオンラインで当該移民研究を披露した。本会議では「黒潮流域圏」を意識した新たな交流を期して、土佐清水市長、愛媛県宇和島市長も開会式で祝辞を述べ、その準備に吉尾も尽力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
The Sixth Biennial Conference of East Asian Environmental History 」(2021年9月7-10日、幹事校京都大学)のRoundtable(Asian and Oceanian environmental history in the future Asian pluralism and environmental diversity under the influences of the Pacific Ocean)での報告に対しては、環境思想史の創始者の一人、米国カンザス大学ドナルド・オースター名誉教授が「過去日本の植民地統治に置かれた南方澳の人々が、何故今交流の意思を持つに至ったのか、この問題を環境史の視点から解明する必要はあるものの、自然環境の変動が人の移住に対してどのような影響を及ぼしてきたかという歴史研究に新しい視点を用いた研究」と評価された。 他方、吉尾の研究交流と成果が土佐清水市、南方澳で認知されたことも一つの契機となり、南方澳開港100周年を記念した国際学術シンポジウム「2021南方澳漁港百週年國際學術研討會」の開催(2021年9月10・11日)において、「黒潮流域圏」を意識した新たな交流を期して、土佐清水市長、愛媛県宇和島市長も開会式で祝辞を述べた。
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今後の研究の推進方策 |
1)代表者吉尾寛が単独或は分担者堀美菜と共に台湾南方澳に出向き、日本統治時代・当地に官営移住した高知県漁民の居住地、漁撈に関係する岸壁、市場、造船所等の跡を最終確認する。 2)Covid-19或は国際問題の影響により、上記1)の現地調査が不可能になる場合を想定し、並行して文献に依って、官営移住した高知県漁民の漁撈・生活に関係する諸施設等の跡地、漁撈の実態等について調査する。 3)吉尾は、南方澳への当該高知県漁民の移住、特に第2期(凡そ1920年代)の同時期には同県人による同基隆を中心とした鰹漁業及び鰹節製造も最盛期に入る事も既に掌握している。本年度はそのフロンティア的人物の活動を文献から具体的に浮き上がらせることによって、本南方澳への官営・高知県漁業移住事業の新たな背景を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響ならびに代表者吉尾の家族の介護・療養支援により、台湾南方澳をはじめとする現地調査が全く不可能になり、旅費の大方を残す結果となった。本年度はその再調査を行なう予定であるが、万一それが不可能になった場合は、文献に依って、官営移住した高知県漁民の漁撈・生活に関係する諸施設等の跡地、漁撈の実態等について調査する。 また、吉尾は、南方澳への当該高知県漁民の移住、特に第2期(凡そ1920年代)の同時期には同県人による同基隆を中心とした鰹漁業及び鰹節製造も最盛期に入る事も既に掌握している。本年度は文献からその実態を具体的に浮き上がらせ、本南方澳への官営・高知県漁業移住事業の新たな背景を明らかにする。
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