研究課題/領域番号 |
17K03138
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
大石 高志 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (70347516)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 軽工業製品雑貨 / 中下層の自立傾向・志向 / 消費 / 模造 / 商人ネットワーク / 嗜好品 / 装身具 / 食品 |
研究実績の概要 |
本研究は、近現代インドにおいて流通と消費の拡大を見た中低価格の軽工業製品雑貨(日本製品も含む)に焦点を当て、それらの消費を中心的に担った社会経済的中下層の動態を、商品やモノにおける社会文化的表象や上級品との間の模倣・模造・差異化といった要素の検証を行いながら解明するもので、2018年度にも引き続きこの研究作業を行った。 海外調査では、プランテーションの歴史的展開過程において、労働者によって集中的に消費された嗜好品(タバコや酒など)や装身具、食品について、その構造を解明する目的で、スリランカ国の文書館や図書館を中期的に訪問・調査して、文献・統計資料の渉猟を行った。日本国内での調査では、1920年代までインド向けの輸出燐寸(マッチ)の地盤であった兵庫県での生産基盤を解明すべく、郷土史編纂用に集積されている原資料の参照を集中的に行った。 研究の成果の発信・発表も積極的に行った。社会経済史学会の全国大会での個別報告のほか、プランテーションと生存・食糧との連関について報告会開催などを行った。また、嗜好品、装身具、食品を中心とする軽工業製品もしくは雑貨の生産、広域流通、在地社会での消費動態などを焦点にした研究成果を、『世界歴史大系南アジア史4近現代』(山川出版)での拙稿「インド人移民・商人のネットワーク:環インド世界における生存確保と経済成長の牽引」や、人間文化研究機構「南アジア地域研究」の成果報告書中で発表した。また、燐寸(マッチ)に関して、C. C. Choi, T. Oishi, T. Shiroyama ed., Chinese and Indian Merchants in Modern Asia: Networking Businesses and the Formation of a Regional Economy (Brill 近刊)の中で研究成果を発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で検証と解明を意図してしている研究課題について、史料の渉猟や分析、研究成果の発表とも、相当程度、順調に進んでいると考えられる。 史料の収集に関しては、これまで集中的に訪問してきたインドやイギリスでのものに加えて、スリランカで、文書館史料などに新たにアクセスすることが出来たことが、特に有意義であった。また、戦前の日本からインドへの主要輸出品の1つであった燐寸(マッチ)について、これまでの輸出流通過程に関する分析に加えて、日本国内での生産の文脈にも分析を広げることができた。 研究成果も、論稿や書籍、報告書などの形で、国内外に対して、積極的に問うことが出来ていると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の展開を振り返りつつ、収集・アクセスする研究史料について、特化・集中性と包括・網羅性とのバランスを取りながら、継続していきたい。 近現代インドの中下層の人々における消費動態と社会性との間のインターフェイスにあたる部分を読み解く作業を、これまで研究代表者が進めてきた装身具(ガラス製のビーズやバングル)や嗜好品(ビーリーなどのタバコ)や食品の研究を展開させながら、さらに推し進め、同時に、研究成果も著していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度には、海外での資料調査も中期的に実施した一方で、日本国内の一次史料(市史編纂用など地方自治体が集積)の集中的アクセスも行ったこともあり、当初の予定もしくは想定よりも、旅費や購入書籍費が計上されなかったことになろう。2019年度には、海外での資料調査も引き続き行う予定があり、これまでの計画に即した支出・使用を十分に見込むことができる。
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