研究課題/領域番号 |
17K03138
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
大石 高志 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (70347516)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インド / 軽工業製品雑貨 / 消費 / アジア間貿易 / 商人ネットワーク / 装身具 / 嗜好品 / 市場の多様性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的と課題は、19世紀後半から20世紀中葉の近現代南アジアにおいて際立った社会・文化性や政治性を帯同しながら消費された軽工業製品雑貨(輸入品と国産製品)を取り上げて、特に、そうした商品の消費を通じて発現した社会経済的中下層の人々の社会・文化的動態や、それに連動したと考えられる商品・市場の多様性・重層性を照射することであり、2019年度も、そのような課題の解明を前提として研究作業・探求を行った。 研究代表者は、研究成果として、これまでにも、硝子装身具や簡易タバコのビーディー(ビーリー)に関する研究を、学会誌『社会経済史学』や共編著(大石含む)『南アジアの人口・資源・環境:生態環境要因を重視した南アジアの長期発展径路解明のための中間報告』(2019)などに発表してきたが、2019年度も、資料収集作業として、インド中央部において英領時代の企業家関係資料の収集や、イギリスのロンドン大学等における英領期の統計や報告書の収集を行なったうえで、口頭報告や成果発表を続けた。たとえば、共編著(大石含む) Chinese and Indian Merchants in Modern Asia: Networking Businesses and Formation of Regional Economy. Brill 2019年11月を上梓した。また、社会経済史学会の全国大会でパネル「近現代横浜における国内外移民集団の展開について」に参加して、「ネットワークと地域:インド人商人と神戸/兵庫県に関する研究からの視座」を発表し、それに基づいた原稿を投稿した段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の報告や出版について、積極的に行うことができているといえよう。たとえば、社会経済史学会という関連の学会やINDAS(「南アジア地域研究」)プロジェクトでの口頭報告に加えて、共編著(大石含む)Chinese and Indian Merchants in Modern Asia: Networking Businesses and Formation of Regional Economy(Brill 2019年11月)という形で、英語での学術書を共編で出版することができた。海外への研究成果の発信や、海外研究者との協働や学術的なコミュニケーションという観点でも、相当の意味を有するものと想定されよう。 研究資料の渉猟も、研究成果と連動的もしくは一体的な重要性をもつもので、積極的に進めることが出来ている。特に、旧宗主国であるイギリスの植民地期の関連統計資料の収集・集積に、相当の進展があった。また、インドでも、簡易タバコ(ビーディーもしくはビーリー)の集中的生産地となってきたインド中央部を訪問しながら、オリジナルな商家資料などの渉猟を行うことが出来た。 ただし、2020年3月には、再度、インドへの資料収集に赴く予定であったところ、新型コロナウィルスの感染拡大により、渡航自体が不可能となり、その実施は叶わなかったので、一部ではあるが本研究課題を、次年度の2020年度に持ち越す予定となった。本助成研究の研究期間の1年延長も、これに連動して申請され、既に認めていただいている。
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今後の研究の推進方策 |
本助成研究については、2019年度の末に、1年の延長が認められており、2020年度には、これまでの流れを踏まえたさらなる研究の進展を期して、研究の実施と研究成果の発表を行っていきたい。具体的には、学会誌などへの投稿などを、引き続き、積極的に行っていきたい。 課題としては、新型コロナウィルスの感染拡大のなか、いつの時期に、そしてどの程度、資料収集等を念頭においた海外(インド等)への渡航が可能になってくるかという問題を指摘できよう。実際、2020年3月には、インドでの資料調査等を行い、然るべき研究成果の発表につなげる予定であったが、それは、渡航自体の禁止により、物理的に実施できなかった。今後の自体の推移にもよるが、こうした不可避的な制約や課題が2020年度内に持続する可能性もあるので、そうした場合、海外渡航による資料収集の内容に、相当程度、近似的もしくは補完的な研究作業を行うことも、可能性としては織り込んでおく必要もあろう。具体的には、メール連絡やオンラインによる研究資料の複写依頼なども、そうした対応策の1つの可能性として考えられよう。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末の2020年3月に、資料収集等の目的でインドへの海外渡航と出張を予定していたが、直前に、新型コロナウィルスの感染拡大により、インド入国のビザの発給停止や無効化が行われ、物理的に、出張調査の実際が不可能になった。その段階で、本研究課題の1年の延長の申請をさせていただき、認めていただいた次第である。本金額は、そうしたなかで、2020年度に持ち越された金額となる。今年度における使用計画については、新型コロナウィルスの感染状況(インド国、日本国など)に大きく左右されるであろうことは否めないが、可能な限りは、2019年度末に想定した使途を想定しつつ、同時に、事態の推移の中で、研究課題に沿って最大限に有意義な活用の可能性を検討していくこととしたい。
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