当初は、18・19世紀のモンゴル年代記のもっとも良い写本・刊本の複製を国外の研究機関より入手して、最良のラテン文字化テキストを作成した上で、前代のモンゴル年代記が18・19世紀のモンゴル年代記にどのように継承されているかを考察する計画であった。しかし、国外の複数の研究機関の状況に変化が生じて、この課題にとって必要となる資料の複製の提供に協力を得られず、加えて、海外渡航ができなくなった昨今の事情により、本課題はずいぶん停滞している。しかしながら、研究対象とするモンゴル年代記のうち、ジンバドルジ著『ボロル・トリ』、ラシプンスグ著『ボロル・エリヘ』、ゴンボジャブ著『アルタン・フルドゥン・ミャンガン・ヒゲースト』、ガルダン・トスラグチ著『エルデニーン・エリヘ』、イシバルダン『エルデニーン・エリヘ』の一部写本、刊本の複製を入手した。これら入手済みのモンゴル年代記の写本・刊本の複製によってラテン文字化することは進めてきた。その結果、思いのほか作成したラテン文字化テキストの文字数が増えた。目下、世界的にモンゴル文献学関連の研究書の刊行が難しくなっている。これに鑑みて、成果公開の方法も再考を要する状況になっていると判断している。そもそもの課題の進展の不調さを打破するために、18・19世紀に成立したブリヤート語史書を予定していた研究に取り込むことを計画したが、コロナ禍のもと、海外での資料収集は依然不可能であり、この面からの進展もなかった。
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