唐後半期において、宦官は皇帝の廃立に関与するなど政治の動向を左右するほどの権力を握った。こうした宦官の権力獲得の要因の一つが令外官である内諸司使である。本研究では、大盈庫使・瓊林庫使をはじめとする財政関連の内諸司使を取り上げ、財政運営への宦官の関与と権力拡大、皇帝権力との関係を検討する。 また、宦官が権勢を獲得し、それを維持できた要因として、宦官が養子をとって家系の存続が可能となったこと、宦官身分の形成、宦官勢力の団結がなされたことも大きい。宦官の家系の維持、発展が彼らの勢力拡大に果たした役割を考察する。 これらの研究課題により、唐後半期の宦官の勢力拡大の背景を明らかにし、そこから最終的には唐宋変革期の皇帝権力の特色を明らかにすることを目的としている。 上記の研究課題を行うために、令和3年度では、引き続き新出の石刻史料の図録等から、唐代宦官やその家族の墓誌銘の収集と整理、先行研究の整理を行った。宦官の家族ごとに埋葬地が形成されており、墓誌には埋葬場所などの情報が記されているので、「被葬者」「埋葬地」「埋葬年月日」「最終官歴」「父祖や兄弟、配偶者や子供」の情報を表にして整理したところ、皇帝の代替わりに応じて、長安郊外の埋葬地が変化することが分かった。その成果をシンポジウムで発表した。現在は、さらに居住地の情報も加えて整理をし、それをもとにした考察結果について論文を作成の準備中である。 さらに、これまでの新出石刻史料の整理の過程で抽出した財政関連の内諸司使に就任した宦官の墓誌銘と、伝世文献史料に残されている墓誌銘なども利用して、大盈庫使や瓊林庫使などの財政関連の内諸司使に就任した宦官の官歴の表を作成した。大盈庫使や瓊林庫使に就任した時に帯びる内侍省職事官の官品も合わせて確認しながら、唐後半期において宦官が内庫を管轄することの影響について検討している。
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