研究課題
研究期間の1年目に当たる本年度は、研究の基礎作業となる史料の収集を中心に作業を進めた。国内では、既刊史料収である中国第一歴史档案館編『清代新疆満文档案彙編』、及び『ロシア・ジューンガル関係史料集:1760-1800』から、ジューンガル崩壊期に関する情報の抽出を進め、東洋文庫においてテュルク語写本マイクロフィルムの調査を行った。また、本研究課題に関連する重要なテュルク語写本である『ホージャ伝』(Tadhkira-yi Khwajagan)の訳注が富山大学教授澤田稔氏により成し遂げられ、日本中央アジア学会年次大会において澤田氏の記念講演が企画されたが、そこにおいてコメンテーターをつとめ、あわせて今後の研究の展望を述べた。国外では、夏期に中国社会科学院近代史研究所から招聘を受けて1週間北京に滞在し、19世紀後半の清・コーカンド関係に関連する学術講演を実施するとともに、中国第一歴史档案館において「軍機処全宗」に分類さてえいる漢文・満洲文・テュルク文・トド文字モンゴル文の文書史料の調査と収集をおこない、本研究課題に直接関連するいくつか重要な史料を見いだすことができた。しかし時間に限りがあったため、年度末に再度北京を訪問して補足調査を実施した。今年度は本研究課題に取り組んで間もないため、特筆すべき新たな研究成果の公開には至っていないが、かつて日本語で公表した関連論文について、英語の翻訳論文を2編を執筆し、公表することができた(ただし1編は印刷中)。また、別の日本語論文1編について、中国の研究者から中国国内における学術雑誌への翻訳掲載の申し出を受け、翻訳者とともに中国語原稿を完成させた(受理済み)。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画において予定していた中国北京における調査を実施し、今後の課題遂行の基礎となる一次史料の一部を収集できた。ただし、本研究は多言語史料の分析に基づくものであり、校務との兼ね合いから、情報抽出まで及ばなかった史料群がある。作業の効率化も課題として把握している。
2年目に当たる平成30年度も諸史料からの情報抽出作業を継続することが、第一の目標となる。当年度後半からサバティカル期間に入り、ウズベキスタン共和国タシケントに約半年間滞在する予定なので、この機会を利用して、本研究課題でも予定していたタシケントでの史料調査を進展させる計画である。
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すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Onuma Takahiro, David Brophy, and Shinmen Yasushi (eds.), Xinjiang in the Context of Central Eurasian Transformations
巻: TBRL 18 ページ: 33-57