研究課題/領域番号 |
17K03141
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
小沼 孝博 東北学院大学, 文学部, 教授 (30509378)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジューンガル / 天山山脈 / 遊牧民 / 新疆 / オアシス / 交易 / 中央アジア / モグール |
研究実績の概要 |
当年度は、これまで同様、研究の基礎となる史料の読解と情報収集をおこなった。清朝公文書史料(档案)、テュルク語史料の『ハミード史』、『ハーン=ホージャム伝』、及び欧文旅行記の分析を進め、天山山脈越えの峠道に関する情報を収集した。具体的な成果としては、16-18世紀の天山山脈南北一帯(東トルキスタン、新疆)における遊牧民(モグール、オイラト)とオアシス定住民の関係に焦点をあてた論文を刊行できた。また、昨年度実施したウズベキスタン共和国における在外研究の報告を執筆するなかで、タシュケントに現存する遊牧首長の墓廟をとりあげ、タシュケントと北方の遊牧勢力との関係を考察した。さらに、1910年にジョージ・モリソンが実施した新疆視察旅行について研究報告をおこなった。 ただし、予定していた海外調査は計画どおり進められなかった。夏期休暇中に新疆ウイグル自治区イリ地区に出張し、かつて天山山脈越えの主要幹線であったムザルト峠へ通ずるシャト古道上に点在する史跡を調査し、現地研究者からの情報提供も求める予定であった。しかし、現地情勢の悪化のため、ジューンガルもチベットとの交易において利用した中国青海省の交易路(西寧~玉樹)の調査に変更した。この対チベット交易には、ジューンガル支配下のオアシス出身商人も参加していた記録が残されている。また春期休暇中に計画していた国内外の文書館における文献調査は、新型コロナウイルスの感染拡大のため全面中止とせざるをえなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、研究計画に応じて、まず夏期休暇に中国新疆ウイグル自治区で現地調査を実施する予定であったが、最近の情勢変化により、当地域において外国人研究者が学術活動に従事することは困難な状況になっており、「研究実績の概要」に記したように、調査地を変更せざるをえなかった。また、春期休暇中に計画していた国内外での史料調査は、新型コロナウイルスの影響ですべて中止となった。本研究課題は、おもに海外での調査に基づいて遂行されるものであり、上記の調査計画の不調により、研究の進捗状況に遅れが生じる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
当面は新型コロナウイルスの影響が継続するとみられ、現在までに収集済みの史料の分析に取り組むことにする。事態終息とともに研究計画を策定しなおす必要が生じるだろうが、残り研究期間を考えると、ただちに計画の遅れを取り戻すことは困難であろうから、場合によっては、最終年度の翌年度への繰り越しによる期間延長も検討せねばならないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響をうけ、当該年度末に予定していた国内外での調査を全面中止としたため、次年度使用額が生じた。基本的な使用計画は、本来の用途であった国内外での調査の経費とするが、出張が可能か否かを見極めつつ、柔軟に対応していきたい。
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