研究課題/領域番号 |
17K03144
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
川島 緑 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (50264700)
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研究分担者 |
菅原 由美 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (80376821)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 東南アジア / イスラーム / キターブ / 出版物 / 思想 / ネットワーク / 物語 |
研究実績の概要 |
研究初年度である本年度は、研究打ち合わせと3回の研究会を通じて、各自の役割分担と研究課題を確認し、お互いの研究内容への理解を深め、共同研究の基盤を固めることができた。さらに、マレーシア(サバ州のイラヌン人コミュニティー:8月、11月、12月、計3回)、ブルネイ(1月)、インドネシア(パダン、パレンバン、バンダ・アチェ、スラバヤ:3月)で海外調査を実施し、これらの地域において保存・使用されているキターブ(写本、刊本)の種類や内容、儀礼における朗誦を含め、キターブの利用、出版活動等についてのデータを収集した。サバ州の調査では、今後の研究の資に供することを目的として、キターブ朗誦や諸儀礼を動画により記録した。これらの研究成果を共有するとともに、関連分野を専門とする外部の研究者との研究上のネットワーク形成を目的として、上智大学アジア文化研究所との共催により、4月20-21日、7月22-23日、1月28日に合計3回にわたり、「東南アジアのキターブ比較研究会」を開催し、カンボジア、ミャンマー、インドネシア、フィリピン、マレーシア、エジプト、ブルネイにおけるキターブとその利用やテキスト朗誦、および、キターブからみた中東・南アジアと東南アジアとのつながりに関する研究報告を行った。さらに、同じトピックを扱ったキターブの各言語テキストの比較研究を目的として、イスラ・ミッラージュ物語のアラビア語、マレー語、ジャワ語、マラナオ語、タイ語テキストの読み合わせを行う勉強会を立ち上げた。以上に加え、これらの研究活動の成果の一部として英語論文論文集草稿を執筆した。この論文集は、2018年度前半に上智大学イスラーム研究センターよりワーキングペーパーとして刊行を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究打ち合わせ(1回)と研究会(3回)を予定通り開催したほか、研究参加者間でメール等を通じて密接に連絡を取り合い、共同研究をスムーズにスタートさせることができた。さらに、研究会には関連分野において実績のある研究者や若手研究者を招いて報告や議論の機会を設け、本研究参加者にとどまらず、この分野の研究に関心のある研究者とのネットワークを形成することができた。海外調査については、エジプトでの調査を次年度に延期したほかは、予定通りに遂行することができ、研究会での海外調査報告を通じてその成果を研究参加者間で共有することができた。当初、本年度中に刊行予定であった英語論文集は、編集作業に当初の予測以上に時間が必要となったために、本年度中に印刷することができなかったが、編集作業は着実に進んでおり、次年度夏までに刊行予定である。このように、若干の遅れが生じた部分はあるものの、他の面では当初の予定どおり、あるいはそれ以上に研究を進めることができ、全体としては概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、研究参加者間で緊密に連絡を取りつつ、各自の研究課題に精力的に取り組み、中間報告を含めその成果を年2回程度の研究会とシンポジウムで報告し、外部の研究者を含めて活発に議論を行い、研究を進めていく方針である。国内遠方や海外在住の研究参加者が東京に出張することが困難な場合もあるので、スカイプ等を利用して遠隔で研究会に参加できるようにし、いっそう共同研究を深めていく。本研究の一つの特色は多言語テキストの比較研究であるので、イスラ・ミッラージュ物語の各言語テキストの読み合わせに力を入れ、研究代表者と研究分担者が積極的にイニシアティブを発揮し、勉強会やメール等でのコミュニケーションを通じてスケジュール通りに研究を進めていく。次年度は、タイ、インドネシア、エジプト、マレーシアでの海外調査を計画しており、これらも予定通り実施し、その成果を研究会で報告し、共同研究を充実させていく。2017年度中に刊行が間に合わなかった英文論文集の編集作業は、すでに半分以上終了しているが、できるだけ早くこの作業を完了し、次年度夏までに刊行する。最終年度には、これまでの研究活動の成果を取りまとめて研究会で最終報告を行い、論文集を刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度にエジプトで海外調査を実施予定であった研究協力者が諸般の事情により調査を2018年度に延期することになった。また、2017年度末に刊行を予定していた英語論文集の編集作業が当初の予想以上に時間がかかり、刊行が2018年度初めにずれ込むことになった。以上の理由により、海外調査費と印刷費合計約43万円をを2018年度に繰り越すことになった。この金額は本来2017年度に予定していたエジプト海外調査、および、英語論文集印刷費に使用予定である。
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