研究課題/領域番号 |
17K03147
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
飯山 知保 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (20549513)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 華北社会 / 親族組織 / 先塋碑 / モンゴル時代 / 碑刻史料 / 系譜編纂 |
研究実績の概要 |
従来の研究成果を国際学会で発表し、関連する研究者からのフィードバックを得るために、2017年度には次の学会発表を行った。2017年6月のAAS-in-Asia(韓国、高麗大学)、同年9月のThe Second Conference on Middle Period Chinese Humanities(ライデン大学、オランダ)。前者においては、“Memory of Mongol Rule and Lineage Building in Ming-Qing North China”と題した発表を行い、モンゴル時代の先塋碑が、明清時代の華北における宗族形成に、官位保持者としての一族の祖先の歴史と、当該一族の数百年にわたる土地保有を証明する文化的資源として活用されたことを、山西省・河南省に点在する3つの事例に対する分析から論じた。これに対し、モンゴル時代史および中国社会史を専門とする韓国・アメリカ・中国の研究者から、碑刻史料の作成・保存における偽造の問題について質疑が行われ、活発な議論へと進展した。その成果は、現在執筆中の著書に反映された。 ライデンでは、同じくモンゴル時代の先塋碑の文化的資源としての側面を、山西省代県の事例へのより詳細な分析を通じて論じた。当該学会では、個人研究者が個別発表を行うのではなく、あらかじめ参加者全員の論考を読んだパネル参加者が、総合的な討論を行う形式であったが、ここにおいても碑刻史料の「改竄不可能」「永続性」といった特質について、他の時代・地域との比較を通じた議論が行われた。ここで得られた知見および批判も、著書に反映されている。 また、日本語で論考を一篇発表するとともに、英語・中国語・日本語でそれぞれ一篇論考を投稿し、これらはみな出版が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国現地における状況の急変により、いくつかの調査対象は変更及び調査の延期を余儀なくされた。たとえば、2017年夏に訪問予定であった蒙古源流博物館については、その石刻展示館がいまだ開館しておらず、今後その開館をまって調査を行うこととした。また、様々な理由により碑刻が失われてしまう事例があり、こうした場合でも計画の変更が必要となった。 他方で、碑刻史料集の出版は予定通り行われており、史料収集と分析は非常に順調に進展している。研究に必要な碑刻の内容や所在地について、新たな情報が多く収集されており、2018年度以降の調査に反映されている。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、計画されていた現地調査の実行に加え、南開大学からモンゴル時代華北に関する碑刻史料集の刊行が開始され、現地調査と史料購入・分析というふたつの研究計画の実施に注力する。 具体的には、河南省三門峡市ベン池県県城に存在する「劉氏祖墳」、山西省中部の汾陽市文水県西槽頭郷狄家社村の「狄青家廟」、そして山西省北部の大同市とその周辺のいくつかの村落を現地調査の対象とする。最後の大同市の調査対象は、昨年度の国際学会での交流によりその存在を知り得たものである。 その一方、碑刻史料集の刊行は2017年7月から開始されることとなっており、いかに早く購入し、実際に分析を始めるのかが重要となる。9月までには全ての分析を終え、著書にその知見を反映させ、できるだけ早いその刊行を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来2017年夏に調査を予定していたオルドスの蒙古歴史源流博物館の石刻展示館が、2017年度には開館せず、その調査を2018年度に延期せざるを得なかったため。
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