従来、史料が偏在する南方中国を中心とした行われてきた歴史的「中国」社会の研究に対し、碑刻史料を全面的に用いて史料の欠落を補った上で、いままで通時的な知見に乏しかった華北社会の歴史を明らかにした。この結果、歴史的「中国」における社会の構造や、国家との関係、そして非中国的要素の存在のあり方などには、非常に顕著な多様性があり、とくに外来の征服者の統治がいかに、そしてどのくらい長く行われたのかにより、在地社会の指導者層のあり方や、その存続の原則などに、従来は想像されてこなかった非中国政権の統治の影響・痕跡があることが分かった。
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