研究課題/領域番号 |
17K03149
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鄭 成 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授(任期付) (20386668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナショナリズム / プロパガンダ / 知識人 / 受容 / 思想転向 / 意識構造 / 文化交流 |
研究実績の概要 |
1950年代、冷戦構造の確立とともに、社会主義理念を唱えるナショナリズムが徐々に中国社会に浸透した。新しいナショナリズムが新生の中国共産党政権の統治強化及び国民の集団意識の形成に重要な役割を果たした。本研究は、このナショナリズムの形成過程を考察するものである。具体的には、人間の内面活動との視点から、伝統文化と西洋の近代文化の影響を受けた知識人がこのナショナリズムをいかに受容したか、そしてその受容によっていかなる自国認識と対外認識精神が形成されたかを中心に考察を展開する。
これまでは、青少年の学校教育、大学生の思想転向を考察してきた。そのなか、大学生の思想転向に関して、社会主義ソ連による文化的影響だけでなく、中国の社会主義建設による精神的影響をも考察の範囲に取り入れて、こうした複数の影響下におかれた当時の大学生の受容を考察した。今年度(4年目)は、当事者の社会的環境との関連性を念頭に入れながら、これまで収集した知識人の日記類の読み込みを続けて、その思想転向を左右した要素とそのメカニズムを考察・分析した。研究成果は、論文「建国初期における青年知識人の社会主義理念への思想転向」にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響で現地への資料調査ができない状態が続くなか、関連資料の収集は現地の友人に協力してもらうことで対応してきた。
これまでは、小中学生、大学生を対象に考察し、若年層におけるナショナリズム教育の浸透状況、受容を左右する要素を把握できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、受動的にプロパガンダを受け入れる印象が強い小中学生、大学生を中心に考察してきた。今後は、プロパガンダの作成にも関わり、プロパガンダの作成者であり、受容者でもあるという二重の立場にある人間を取り上げる。複数の個別ケースの取り上げを通じて、考察対象を充実化させていく。それを通じて、社会主義理念を唱える新しいナショナリズムをめぐる、国民の受容過程を立体的に把握する考えである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、予定した資料調査が実現できなかった。
次年度は、プロパガンダの推進側の人間を取り上げて考察する。研究経費を関連資料の購入、資料整理のための人件費に当てる。
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