中華人民共和国建国初期にあたる1950年代初期は、中国共産党政権の推進下で新しいナショナリズムが形成されるようになった。新しいナショナリズムが長くわたり、国民の自国認識と対外認識に深遠な影響を及ぼした。 本研究は、ナショナリズムの形成過程をめぐり、日記などの資料を利用して当時の人々の内面を考察し、ナショナリズムの形成に影響を及ぼした種々の内的、外的要因の解明を目的とする。 2022年度は、中共の若手党幹部の認識形成に焦点を当てて、彼らの社会主義思想がいかに形成し、固定化したかを考察した。考察を通じて、人格形成期に植え付けられた社会主義価値観が後に、本人の自己教育の原動力として長き亘り機能しつづけたという結論に達した。京都大学での「毛沢東時代の暴力とイデオロギー」ワークショップで研究報告を行った。 本科研がスタートして以来、著名文化人、青年知識人、小中学生を考察対象としてきた。これらの研究とあわせると、建国初期の中国社会におけるナショナリズムの形成について、複数の視点から展開する考察が最終年度において完成することになった。上記の考察作業を通じて、建国初期のナショナリズムの形成をめぐって、当事者を取り巻く内的、外的要因を明らかにできた。それによって、時代の特徴を説明できる立体的歴史像を提示することが可能となった。
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