研究課題/領域番号 |
17K03156
|
研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
坪井 祐司 名桜大学, 国際学部, 上級准教授 (70565796)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | マレーシア |
研究実績の概要 |
1930年代にクアラルンプルで発行されたジャウィ新聞『マジュリス』の国際問題に関する記事を分析し、その世界観を分析した。その論考を東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の共同研究の成果論集の一部として英語の論文を寄稿した。論考では、同紙が同時代の国際情勢に強い関心を示しており、イスラム世界だけでなくイギリスの情報源をもとに広い視野を持っていたことを明らかにした。そして、満洲やパレスチナとった同時代のアジアの国際紛争を移民による現地民の権利の侵害ととらえ、マラヤにおける華人とマレー人の関係になぞらえることで、自らの主張を補強しようとしたことを論じた。 それとともに、1950、60年代にシンガポールで発行されたジャウィ月刊誌『カラム』の読者投稿による質問コラム「千一問」を分析した。その論考を京都大学東南アジア地域研究研究所の共同研究のディスカッションペーパーに寄稿した。論考では、質問への回答におけるコーランの引用の傾向性を分析し、イスラム実践に関することだけではなく、自然科学の説明や現代政治の論理付けにコーランを利用していたことを示した。このことは、同誌編集部のイスラム知識人が社会の諸現象を近代的な知識とイスラムをあわせて説明しようとする姿勢のあらわれであり、彼らのイスラム近代主義的な価値観の反映であると論じた。 くわえて、研究成果の社会還元の一環として、日本シンガポール協会の会誌『シンガポール』に連載記事を2編寄稿した。内容は、シンガポールの現在のランドマークと町の建設者ラッフルズの事績をからめて歴史を解説するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、感染症拡大に影響により、予定した海外出張ができなかったため、資料調査が進められないままであった。ただし、本研究を遂行するうえで中核となる資料については前年度までに収集がおおむね完了しており、その一部はデジタル化を進めている。このため、本年度は収集済みの資料の読解・分析を進めることで対応することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
感染症の状況により、2021年度も海外出張ができるかどうか不透明な状況は変わらないと考えられる。このため、状況に応じて複数の方策を用意しておく必要がある。感染症の状況が改善すれば海外での資料調査を行うが、そうでない場合は研究活動を国内に限定しつつ、収集済みの資料の分析に集中する。海外の研究者との交流は、遠隔による学会への参加を通じて行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
感染症拡大の状況により、予定していた海外出張が行えなかったため、その分を次年度に繰り越すこととした。次年度は、海外渡航が可能であれば海外出張による資料調査を行うが、不可能であった場合には国内出張(資料調査・研究者との打ち合わせ)および物品費(主に書籍)として使用する。
|
備考 |
(1)は、筆者が幹事を務める「ジャウィ分権と社会」研究会が運営するホームページであり、共同研究を通じてデジタル化した資料『カラム』のデータベースである。
|