ユグノー救護院に関わるユグノーの子孫が、ユグノー協会の設立にも関わっていたことは比較的よく知られている。しかし、17世紀末のユグノー亡命者の記憶とネットワークが、18世紀中葉、イギリスのエスタブリッシュメントに属するようになったユグノー子孫に受け継がれて複数のプロテスタント救援活動を支えたこと、またさらにその子孫が、19世紀の近代歴史学成立・展開の中で、ユグノー協会の設立を行なったことは、これまで明らかにされてこなかった。本研究が、18世紀中葉のユグノー第二世代の活動を具体的に解明し、その記憶の継承を裏付けたことは、ユグノー研究、宗教が核となったアイデンティ、記憶の歴史の観点からも意義がある。
|