研究課題/領域番号 |
17K03165
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
千葉 敏之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20345242)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヨーロッパ史 / 中世 / 思想史 / ダイアグラム |
研究実績の概要 |
本研究計画「『悦楽の園』にみる12世紀ヨーロッパのダイアグラム的思考術とその波及」は、12世紀末にアルザスの女子修道院ホーエンブルクで編纂された百科全書的編纂物『悦楽の園』内のダイアグラム頁の構成を手がかりに、パリ大学をハブとして流通したダイアグラム写本の波及経路をヨーロッパ全域にわたって跡付けるとともに、12世紀ルネサンス期に固有の、パリ大学を拠点に育まれた思考術(ダイアグラム的思考術)の内容・形成過程を明らかにすること、またパリ大学を経由してアルザスに向かったこの思考術を最も良く体現する『悦楽の園』を、ホーエンブルク修道院における女子修道士の生活・信仰実践との接合という観点から再読することによって、12世紀ルネサンスの知的達成が波及先の地方においていかに受容されたか、その実態を解明しようとするものである。 本研究計画の3年目にあたる2019年度の前半期は、前年度までの研究成果をまとめつつ、学会報告を行なった。また、トレド翻訳運動との関係を明らかにする観点から新たに調査対象に加えたスペインでの調査の準備を行ない、9月にはスペインに渡航し、クエンカ、マドリード、ムルシア、カルタヘナにおいて、実地での調査を行なった。2019年10月~2020年3月まで、本務校より特別研修期間を与えられ、研究に専念する環境を与えられたが、家族が大病をし、手術と長期の入院を余儀なくされたたため、この期間に予定していた海外での調査はすべてキャンセルせざるを得ず、主に国内にてこれまでの調査結果について考察し、その成果をまとめることに費やした。また、同時に2020年1月末以降は、新型コロナウィルス蔓延のため、海外に渡航することができず、3月には図書館を利用することも困難となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年10月~2020年3月まで、本務校より特別研修期間を与えられ、研究に専念する環境を与えられたが、家族が大病をし、手術と長期の入院を余儀なくされたたため、この期間に予定していた海外での調査はすべてキャンセルせざるを得なかった。同時に、2020年1月末以降は、新型コロナウィルス蔓延のため、海外に渡航することができず、3月には図書館を利用することも困難となった。しかし、主に国内において、関連する研究文献と収集した史料を解読し、またこれまでの現地での調査結果について十分な時間をかけて考察した結果、その成果の一端を学会報告・論文・編著にまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も、新型コロナウィルスを原因とする様々な制約から、海外での調査の可否は見極めが難しくなっている。昨年度実施予定であったヨーロッパでの現地調査(実現できたとしても年度の後半となる:『悦楽の園』の編集に結びついた空間的な知の系譜・知の伝播・集積ルートの確定)の可能性を想定しつつ、調査が困難である場合に備え、これまで集めた研究文献・史料と、さらなる文献の入手を国内で進め、それらの分析を着実に実施しながら、本計画の4年間についての包括的な結論を導き出す。
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