研究課題/領域番号 |
17K03166
|
研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
下里 俊行 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80262393)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 中央アジア / エスニック・アイデンティティ / 身体性 / 生物学 / 医学 / 心理学 / 教育学 |
研究実績の概要 |
第1に、ロシア帝国の中央アジア地域における民族誌学研究の具体的状況をウズベキスタンの博物館で調査した。その結果、ロシア帝国のロシア人(русские)研究者による中央アジアの民族誌学的調査が、帝国の民族的多様性について認識を形成し、ロシア帝国の帝国臣民としてのアイデンティティとエスニシティとしてのロシア人やその他の諸民族との差異の意識を醸成する土壌となったのではないかという問題設定と示唆が得られた。 第2に、19世紀後半における人間観の変容を、身体論を軸に分析・検討した。19世紀前半まで、ロシア帝国における人間観は、制度的な身分制のもとでの、一方で、啓蒙思想の「普遍的」人間像と、他方で、ロマン主義の「民族的文化的特徴」を重視する人間像との相克のなかで、19世紀後半以降は、人間の身体的共通性と身体的な差異を生物学的な観点から議論する論調と、人間の主観的意識の共通性とその意識内容の差異を心理学的な観点から議論する論調が台頭していくなかで、民族誌学研究にかかわるエピステーメー(認識枠組)が変容していくのではないかという仮説が得られた。今後は、人間の身体と意識をめぐる「学術的言説」(生物学・進化論・医学・心理学・教育学)の変容を検討するなかで、学問分野としての「民族誌学」の原理と方法論の変化との関連性を考察し、これらの変容・変化がロシア帝国の文化政策とどのように関連しているのか、いないのか、について検討する必要があることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた資料収集・分析を順調に進めることができ、前年度の遅れを取り戻すことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
COVIDー19の蔓延により海外での資料調査・収集の計画を変更せざるを得ないが、ロシアの文献史料の電子化の進展により、遠隔調査の可能性が拡大したので、今後は、収集済みの文献史料の読解・分析に集中する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2020年3月に実施することを計画していたロシアでの資料調査のための出張が、勤務校による海外渡航自粛要請により延期となったためである。今年度は、ロシアへの出張の可能性があれば渡航のために使用するが、渡航が難しい場合には、文献史料の調査・収集(文献購入)を中心に使用する。
|