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2020 年度 実施状況報告書

19世紀ロシア帝国の文化統合における民族誌学調査の役割に関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K03166
研究機関上越教育大学

研究代表者

下里 俊行  上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80262393)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード研究史 / 教義神学 / 革命的知識人 / 有機的進化
研究実績の概要

第1に、ロシア帝国の民族誌学の研究史を整理した。その結果、そこには二つの方向の問題意識が伏在していたことが明らかになった。一方で、ロシア正教の教義神学の観点から「異端・異教・異族人」の信仰に対する調査をおこなう必要性に立脚したものと、他方で、革命的知識人による反体制運動の潜在的可能性をもった正教会から「異端」と見なされていた人々についての共感的な理解の欲求にもとづくものである。その背景には、反体制活動家が政府の刑事罰(流刑・苦役)によって「中央」から「周辺・辺境」へと追放され、現地の人々と交流したことがある。
第2に、19世紀後半における進化論、とくにハーバート・スペンサーの有機的進化の理論のロシア知識人による受容・批判の諸相を再検討した。このことは、民族誌学調査における人間観・身体観の変容と関連しているという観点からである。
その結果、近代的な社会編成の主要な推進力としての生産・生活手段の私有化、労働の分割・分業に対して批判的な視点から民族誌学的調査の対象者に対して共感的な立場と、逆に否定的な立場とがはっきりと分岐・対立していたことが明らかになった。またロシア正教の教義神学の立場の論者も、後者の立場に並行していたことも明らかになった。
以上の文献による調査を踏まえて、今後は、ロシア帝国の政策決定者が民族誌学調査の結果をどのように理解し評価していたのかを検討することで、19世紀におけるロシア民族誌学調査がロシア帝国の文化統合の面でどのように機能したのかを最終的に解明することになる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していた資料・文献の分析を順調に進めることができたため。

今後の研究の推進方策

COVIDー19のパンデミックが収束しない状況のなかで海外での資料調査・収集の計画を予定通り実施する見通しが依然として不明であるが、ロシアの文献史料の電子化の進展と、オンラインによる国際会議の開催の可能性が拡大したので、最終年度として収集済みの文献史料の分析を進めるとともに、その成果の発表・論文化をおこなう。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、2020年前半に実施することを計画していたロシアでの資料調査のための出張が、新型コロナウイルスのパンデミックにより日本側の渡航自粛とロシア側の入国禁止措置により延期になったためである。今年度は、ロシアへの出張の可能性があれば渡航・滞在費として使用したいと考えているが、渡航が難しい場合には、文献の購入費用および研究成果の発表費用を中心に充当する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 国際共同研究 (1件)

  • [国際共同研究] サンクトペテルブルク国立大学哲学研究所(ロシア連邦)

    • 国名
      ロシア連邦
    • 外国機関名
      サンクトペテルブルク国立大学哲学研究所

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公開日: 2021-12-27  

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