研究課題/領域番号 |
17K03166
|
研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
下里 俊行 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80262393)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 異教 / 偶像崇拝者 / 流刑 / ジェンダー / ユダヤ教 / 世界観 |
研究実績の概要 |
民族誌学のフィールドワークに関する文献調査の結果、以下のことが明らかになった。第1に、宗派帰属に関わる統計データは人口調査により把握され、正教徒、カトリック、プロテスタント、ユダヤ教徒、イスラム教徒、ウニアート以外のいわゆる「異教」信仰者язычникは「偶像崇拝者идолопоклонники」という範疇で算定され、その数は18世紀末から19世紀初頭にかけて90万人から40万人に減少しているデータがあること。その背景には18世紀後半の沿ヴォルガ・沿ウラル・シベリアでの大衆的なキリスト教化の動きがあったと推定されることである。第2に、民族誌学のフィールドワークにおけるジェンダー・バイアスの問題、つまり、男性研究者・調査者は、調査対象の女性たちの調査に関してハードルが高いという問題が内在していること、その結果、民族誌学の分野に女性研究者が参入し始める20世紀初頭以前のフィールドワークの調査結果には、男性視線のバイアスが内在していることである。第3に、北方やシベリアを対象とした学術的水準の高い民族誌学的研究が進展した構造的背景には、西部地域やペテルブルクやモスクワなど大都市部での反体制運動の活動家たち(特に「人民の意志」派)が辺境地に流刑されたことがあり、その際、少なからぬ著名な研究者たちの出自が非主流の宗派と結びついていることである。その際、非主流の宗派の教養と、シャーマニズムなどの先住民族の信仰との関係性について、個別の質的分析をする必要性が明らかになった。第4に、大規模な民族誌学調査を実施した帝立地理学協会は、フィールドワークの展開にあたって、前述の流刑者=研究者たち(例えば、を積極的に登用しつつ、また彼らの研究成果を積極的に公表し賞讃していたことである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロシアに渡航して現地調査をすることができなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
ロシアへの渡航が可能になり次第、現地調査を実施するが、渡航が難しい場合には、旧ロシア帝国領域の諸外国等での現地調査に計画を変更する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ蔓延のため現地調査を実施することができなかったため。今年度の前半までにロシアへの渡航の可能性の有無を見極めたうえで、旧ロシア帝国域内の諸外国での現地調査を実施する計画である。
|