本研究の目的は、バルト三国や、第二次世界大戦までポーランド領であった東ガリツィア(西ウクライナ)との比較を念頭におき、ベラルーシ・ソヴィエト社会主義共和国の首都ミンスクにおけるホロコーストの特徴を、(1)ホロコースト以前のユダヤ人と非ユダヤ人の社会的関係、(2)ホロコースト期のユダヤ人とコミュニスト抵抗運動の関係に焦点をおきつつ明らかにすることであった。 この目的はほぼ達せられ、研究によって得られた知見は、論文「ミンスクのホロコースト――ユダヤ人抵抗運動の成果と限界」にまとめ、前篇と後篇にわけて『金沢大学経済論集』第39巻第1号、第2号に発表した。現時点では、ミンスクにおけるユダヤ人の歴史とホロコーストの詳細を論じたほとんど唯一の邦語論文であると思われる。 研究期間最終年度にあたる本年度は、上記論文脱稿後に入手したミンスクに関する文献の読解を進める一方、ベラルーシのミンスクに続く次の研究課題として、ウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国の首都キエフにおけるホロコーストの様相について、史料・資料の収集も開始した。ウクライナは、上記(1)の観点に関して、歴史的に暴力的なユダヤ人迫害がまれであったベラルーシ地域と異なり、帝政ロシア時代にポグロムが頻発した地域として知られる。 さらに独ソ戦全般について知識を広めるため、成蹊大学名誉教授富田武氏による独ソ戦研究会の立ち上げに参加、協力した。同研究会のメンバーである軍事史研究家、大木毅氏の報告および著書『独ソ戦』(岩波新書、2019年)からは学ぶところが大きかった。
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